抄録
症例は43歳男性.軽度の上腹部痛を認め,近医にて膵嚢胞を疑われ,精査目的で当科に紹介された.腹部超音波検査では胃と膵の間にコンマ状の嚢胞状構造を認め,超音波内視鏡検査では嚢胞に接する胃壁の5層構造は保たれ,膵との境界は明瞭であり,エンハンスCTによる濃染は認められなかった.以上より胃漿膜側あるいは膵の後腹膜側の腹膜嚢胞と診断した.開腹術により,胃幽門小彎後壁と小網に跨って存在する,3×4×1.5cmの単房性の胃漿膜嚢胞で,内容液は漿液性であり,組織学的には,嚢胞壁が一層の扁平な中皮細胞よりなる腹膜嚢胞が確認された.本例では,超音波内視鏡,腹部超音波検査により術前に腹膜嚢胞と診断可能であり,上記検査の有用性が示唆されたので報告した.