日本遺伝看護学会誌
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研究報告
小児看護領域の高度実践看護師からみた遺伝看護の継続教育への課題
荒武 亜紀野間口 千香穂中込 さと子
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2020 年 18 巻 2 号 p. 71-83

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抄録

目的:小児看護領域の高度実践看護師の遺伝看護ケアへの参加状況や遺伝看護ケア実践のための学習意欲に影響する要因を明確にすることにより教育プログラム作成への示唆を得る。

方法:研究者らが作成した無記名自記式質問紙調査を行い、小児看護専門看護師147名に調査協力を依頼し、29名から回答が得られ、回収率は19.7%であった。小児看護領域の遺伝看護ケアの実施状況、遺伝看護ケアに対する態度、および学習意欲向上への課題と関連する要因について記述統計にて分析した。自由記載については質的内容分析を行った。

結果:小児看護専門看護師は、遺伝学的問題を有する小児患者とその家族のケアニーズに直面した場合には、積極的に子どもの症状ケアや管理、家族の不安への対処のケアなど精神的支援を実施していた。しかし、7割の回答者は知識や経験が不足していることによる力不足を感じており、知識・経験・学習機会の少なさが自信のなさにつながっていた。これらのことから、小児看護専門看護師に対する遺伝看護教育の内容は、告知時の家族に対する対応と子どもに対する説明に関する長期的な支援、発達段階に合わせた在宅療養に必要な社会的資源の調整や遺伝医療部門との連携とその後のフォローアップ方法、子どもの発達に伴い変化する遺伝学的問題に関するニーズ把握、子どもの発達に伴って生じる課題に対するライフイベントの見通しを立てた支援などを教育の範囲とする必要があることが示唆された。また、実践能力を高めるために必要な学習支援として、事例をもとに遺伝学的問題を有する子どもと家族がどのような課題をもつか推論し、自己の実践を振り返る機会を持つことができる遺伝看護ケアのゴール設定と評価方法を組み入れた教育プログラムを開発する必要性が明らかとなった。

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