日本消化器内視鏡学会雑誌
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ICG静注肝染色法の臨床的有用性の検討とその基礎的研究
名和田 浩
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1987 年 29 巻 2 号 p. 235-245

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抄録

 近年,腹腔鏡検査におけるICG静注肝染色法の有用性が報告されるようになり,腹腔鏡検査を施行するうえで,重要な補助診断法として注目をあびてきている. 当科においても過去3年間136例に本法を施行したが,今回ICG染色法の臨床的有用性を明らかにするために,3つの項目について検討を加えた.第1に慢性肝炎における腹腔鏡診断が,本法の併用によって,通常の腹腔鏡観察以上により生検診断に近づくかどうか,第2に脂肪肝診断における本法の有用性についての基礎的検討,第3に肝細胞癌における本法の有用性についての基礎的検討を行った. 検討の結果,慢性肝炎の進展を考えるうえで重要な指標となる肝表面微細所見の照診率に向上がみられた,つまりマクロ的診断をよりミクロ的診断に近づけることが可能となった.さらに,肝表面を染色性により3群に分類し,0.5および2.0mg/kgICG静注後の15分値と比較したところ,肝表面の染色性の淡く均一なものは肝予備能が保たれており,染色性が濃く不均一なものほど肝予備能が低下していることがうかがわれた. また脂肪肝については,脂肪沈着部位の診断がより明確になった. 肝細胞癌についても癌部は染色されず,非癌部との境界が明瞭となることから,きわめて小さい肝癌(mm肝癌)診断の有力な検査法になることが示唆された.肝発癌ラットによる実験においてもこの事実を証明することが可能であった. 以上のことからICG静注肝染色法は,臨床的に肝表面微細所見観察に有用であるばかりでなく,脂肪肝,肝細胞癌の診断にも有用であることが立証された.また肝予備能との対応から,本法は機能的腹腔鏡の要素もあると考えられた.

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