抄録
今回,われわれはS状結腸のLymphangiectasiaの1例を経験したので報告する. 患者は57歳男性で,1982年11月(今回入院より約3年前)下腹部痛を訴え初回入院となった.大腸X線検査にてS状結腸の狭小化,内視鏡検査では同部に正常粘膜に被われた小隆起性病変および浮腫状変化を認めた.その後著変はなかったが,1984年6月,subileusの状態で第2回入院となった.原因は前述のS状結腸の狭小化による閉塞と思われ,注腸X線検査では,病変部の狭窄の進展がみられた.内視鏡検査でも内腔の狭小化は進行しており,さらに特記すべき点として,先の小隆起性病変が多発していた.このため患者に手術を勧めたが拒否したため緩下剤投与で経過観察とした.しかしながら1985年7月,再び腸閉塞で第3回入院となった.入院後S状結腸の切除を行ない,Lymphangiectasiaの診断を得た. 結腸におけるLymphangiectasiaの報告はきわめて稀であり,上述のごとく約3年に渡り臨床経過を追跡し得,さらに興味ある知見として漿膜面にserositisの所見がみられたので若干の文献的考察を加えた.