抄録
最近われわれは,閉塞性黄疸の経過中に大量下血で発症した急性出血性直腸潰瘍の1例を経験した.患者は75歳の女性で,上腹部痛,黄疸の主訴にて入院した.右上腹部圧痛あるも筋性防御はなかった.便潜血陽性,好中球増多,CRP強陽性,血沈亢進,血小板減少を示し,総ビリルビン10.3mg/dlであった.内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)にて総胆管結石の診断を得,経過をみていたところ第8病日に突然大量の下血ありショックとなった.内視鏡検査で直腸全体に炎症性変化と多発の潰瘍形成を認めた.粘血便が持続し,輸血量は計1,000mlを要した.注腸X線は直腸の造影剤付着ムラのみで伸展良好であった.直腸病変は難治性に経過し,サラゾピリン投与,ステロイド剤注腸,メトロニダゾール投与を試みるも治癒は得られなかった.経皮的胆道ドレナージ(PTCD),胆道鏡下截石術施行時期に一致し直腸病変の改善を認め,第108病日に内視鏡的に直腸病変の治癒を確認した.河野ら,添野らがまとめた重症基礎疾患を有する患者に伴う急性出血性直腸潰瘍に相当する1例と思われる.