抄録
昭和55年1月から59年12月までの5年間の日本大学板橋病院消化器科入院患者1,201例,および同病院内視鏡室における食道の観察を主目的とした上部消化管内視鏡検査例859例について,肝疾患と消化管疾患の関連性を検討し,次の如き結果を得た. 入院患者における肝疾患患者の消化管疾患合併率は39.8%,消化管疾患患者の肝疾患合併率は21.2%である.食道の観察を主目的とした上部消化管内視鏡検査例では,肝疾患の進行につれて胃疾患および十二指腸疾患の合併率が高まる.また食道静脈瘤の進行につれて,胃疾患および十二指腸疾患の合併率が高まる.さらに個々の疾患についてみると,食道静脈瘤の進行につれて,胃静脈瘤の合併率が高まる.肝疾患のある食道正常例,食道静脈瘤例では,胃にびらんがみられる頻度が高い.食道正常例と食道静脈瘤例を比較すると,食道静脈瘤に合併する胃潰瘍では,十二指腸潰瘍に比べてopenの比率が高い傾向がある.食道静脈瘤に合併した胃びらん,胃ポリープでは,食道正常例にみられる胃びらん,胃ポリープに比べて胃体部のものが若干多い傾向がみられる.また食道静脈瘤の進行につれて,食道静脈瘤からの出血の頻度,R-Csignの出現率,R-Csign(+)例からの出血の頻度が高まる.R-CsignOの食道静脈瘤例にみられた出血では,食道静脈瘤からの出血と確認された例は10%に過ぎない.