抄録
胃生検組織中にTyeponema pallidumを確認しえた胃梅毒の1例を経験したので報告する.症例は48歳男性で,主訴は心窩部痛である.胃X線検査により,胃体下部後壁に粘膜集中を伴う不整形潰瘍を認めた.胃内視鏡検査では,潰瘍辺縁の発赤と周辺粘膜の浮腫を伴う浅い地図状潰瘍で,その周囲にさらに3個の小潰瘍を認めた.胃生検組織の鍍銀染色(岐阜大学変法)で,Tyeponema pallidumが証明され,駆梅療法により血清梅毒反応の低下を認めたことより,第2期の胃梅毒と診断した.本症例では駆梅療法開始前に潰瘍の治癒および胃病変部のTreponama pallidumの減少が認められ,第2期梅毒診と同様に,第2期梅毒の胃病変も自然消退することを示す症例と考えられた.