抄録
鹿児島県の腹部超音波集検は1984年に当時の県成人病予防協会(現県民総合保健センター)によって開始された.鹿児島県厚生連健康管理センターでは1994年から巡回健診の一部としての集検を開始した.また人間ドックでは胆のう検診として行っていた腹部超音波検査を,上腹部5臓器を標的とする検診として本格化した.現在では集検3万人,ドック1万人を越える受診者に対し0.06%強のがんと多数の要処置疾患を発見してきている.しかし,検診成立要件として考察すると安全性,簡便性,効率などは満たしているものの経済性や有効性に関しては検討がきわめて不十分である.さらに,腹部超音波検診は他のがん検診と異なり健康診断的性格を有しているが,生活習慣病対策としての効果についても検討が必要である.これらの検討のためには,今後は事後管理活動の強化が必要であり,腹部超音波検診に従事する医師や技師にもそのような視点・意識が要求される.