抄録
下血およびイレウス症状を呈し,諸検査にて小腸アミロイドーシスに伴った限局性虚血性回腸炎と考えられた1例を報告する. 症例は71歳,男性で,10年来慢性気管支炎として経過観察されていた.今回,気管支肺炎にて入院し,腹痛,下痢,下血が出現し,次第にイレウス症状を呈してきた.イレウス管よりの小腸造影では,回腸末端部より口側へ約40cmにわたりthumb-printing様の回腸径の狭小化と壁不整がみられた.大腸ファイバースコープによる回腸末端部の観察では,回腸粘膜のびらん,出血,潰瘍形成を認めた.これらの症状や病変は中心静脈栄養とイレウス管による腸管安静にて消失した.回腸末端部,直腸,腎生検によりアミロイドの沈着が認められ,全身性アミロイドーシスと考えられた.その病像や経過より限局性虚血性回腸炎の像を呈していたと考えられたので,若干の考察を加えて報告する.