抄録
症例は43歳,男性.繰り返すタール便を認め,貧血となったが出血部位が不明で入院した.小腸二重造影X線検査を施行したところ,下部回腸に平坦な小隆起を認めた.開腹手術時,この部に手拳大の腫瘤があり,病理組織診断は腸間膜のリンパ管腫であった.X線所見上の小隆起は,この腫瘍が浸潤,増殖し回腸粘膜面に顔を出した所見であった.また,術中の内視鏡検査では,この部分は表面に白色の微細顆粒のある平坦な隆起として捉えられた.この内視鏡所見はリンパ管腫が粘膜面に現われた時の特徴的な所見と考えられる.そして,腸間膜リンパ管腫も,非常に稀であるが消化管出血の1つの病巣となりうる.