日本消化器内視鏡学会雑誌
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同時性食道・胃早期重複癌の1例
矢野 謙一川崎 恒雄山田 武男永井 鑑和田 靖菊池 正教遠藤 光夫
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1988 年 30 巻 10 号 p. 2272-2281

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抄録

今回,われわれは食道と胃の同時性早期重複癌で,食道病変がep癌であり,5多発早期胃癌と1つの胃異型上皮巣(以下ATP)を合併していた症例を経験したので報告する.症例は73歳女性で,検診にて胃の異常陰影を指摘され,当科における上部消化管内視鏡検査で胃体下部前壁寄り小彎と下部食道に早期癌を発見された.手術は,食道亜全摘,穹隆部から噴門と胃体下部にかけての小彎側胃切除,胸骨後大彎側胃管再建術を行った.切除標本の病理組織学的検索では,下部食道に3.2×2.5cm,深達度epの早期癌を認め,胃体下部小彎に1個のI型と3個のIIa型,さらに体上部小彎に術前診断不能だった1個のIIc型病変を認め,すべて深達度mであった.また,胃内に直径1mmのATPを合併しており,リンパ節転移は認めなかった. 食道と胃の同時性早期重複癌の本邦での報告は,本症例を含めて14例であるが,食道病変がep癌であるのは本症例のみである.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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