日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
Leser-Trélat signを呈し食道び慢性乳頭腫を合併した胃癌の1例
重松 忠福井 和彦鮫島 庸一春日井 達造西川 和久加藤 肇服部 和彦
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 30 巻 10 号 p. 2282-2286_1

詳細
抄録

症例は84歳の男性で,急速に多発,増大した掻痒感を伴う疣贅を主訴に来院.疣贅の組織は脂漏性角化症であり四肢を中心に全身に認められた.Leser-Trélat signを疑い精査したところ上部消化管造影および内視鏡検査にて前庭部の進行胃癌(Borrmann III)が認められた.手術を勧めたが宗教上の理由で拒否し退院した.半年後,全身倦怠感および疣贅の掻痒感が増強し再診した.上部消化管内視鏡検査にて前回検査時に認められなかった食道の多発性乳頭腫が認められた.この乳頭腫は食道全域に発生しており,食道造影では食道真菌症との鑑別を要し,生検組織は扁平上皮であった.本症はLeser-Trélat signを呈した進行胃癌症例の経過観察中,食道のび慢性扁平上皮乳頭腫の合併を認めた極めて稀な症例である.この短期間に増大多発した皮膚の脂漏性角化症とび慢性食道乳頭腫の発生にはなんらかの関連が推測される興味ある1例であった.

著者関連情報
© 社団法人日本消化器内視鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top