日本消化器内視鏡学会雑誌
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上行結腸に粘膜下腫瘍所見を呈した腸アニサキス症の1例
辻 邦彦渡 二郎山田 政孝鈴木 貴久浜田 弘巳澤谷 令児吉川 紀雄上村 友也矢崎 康幸関谷 千尋並木 正義
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1988 年 30 巻 11 号 p. 2669-2672_1

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抄録
注腸エックス線検査で,上行結腸に粘膜下腫瘍所見を呈した腸アニサキス症の1例を報告した.症例は67歳女性.下腹部痛を主訴として某医を受診し,精査のため当科を紹介された.入院時一般検査では,好酸球数の軽度増多をみたが,CRPや便潜血反応は陰性であり,血液生化学所見なども特に異常を認めなかった。しかし注腸エックス線検査で上行結腸腸間膜側に,長径3cmの辺縁明瞭,表面平滑な結節状隆起の所見がみられた.大腸内視鏡検査でも同部位に表面粘膜が正常で立ち上がりの不明瞭な隆起性病変を認めた.以上より,上行結腸粘膜下腫瘍と診断し手術を施行した.切除標本においては粘膜下に2.5×1.5cm大の腫瘤がみられた.組織学的には,線虫の虫体死骸と好酸球の浸潤を認める好酸球肉芽腫であった.免疫学的に患者の血清をOuchterlony法で検討した結果アニサキス抗体陽性を示したので,本症例の病態は上行結腸に刺入したアニサキスによるものと考えた.
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