抄録
胃潰瘍の病態を検討する目的で,レーザードップラー法を用いて胃粘膜血流を測定した.対象は,胃潰瘍患者47名,正常者30名である.測定部位は胃体部,胃前庭部,胃角部と潰瘍の辺縁(潰瘍縁より5mm以内)と周辺(潰瘍縁より2cm)である.正常胃粘膜の粘膜血流は胃前庭部より胃体部に多く,また胃体部小彎より大彎に多かった.潰瘍各ステージの潰瘍辺縁の粘膜血流は,潰瘍治癒過程期にもっとも高値を示し,瘢痕期にいたり低下した.潰瘍周辺と辺縁の粘膜血流の比較では,潰瘍急性期,瘢痕期には辺縁と周辺粘膜に血流の差はないが,治癒過程期には周辺粘膜に比べ辺縁で血流増大がみられた.レーザードップラー法を用いた胃潰瘍の粘膜血流測定は,簡便さ,再現性の面から胃粘膜防御機能検討に有用な測定法と考えられた.