日本消化器内視鏡学会雑誌
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上行結腸リンパ管腫の1例
松本 収生松本 好市古屋 正平出 典子重盛 憲三
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1988 年 30 巻 2 号 p. 410-415_1

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抄録
 症例は50歳,男性.下血と右下腹部痛を主訴とし,注腸造影所見にて上行結腸に3.0×4.5cmの陰影欠損を認めた.辺縁は一部に切れ込みを認めるも,全体的に平滑で,圧迫により形状の変化がみられた.大腸内視鏡所見では上行結腸に回盲部付近より肛門側に垂れ下がったような形状を呈した隆起性病変を認めた.表面は平滑,淡黄色で,生検時非常に軟らかく,伸びてくるような感じを受けた.粘膜下腫瘍,特に脂肪腫を疑い,回盲部切除術を施行した.切除標本では腫瘤は4.0×4.0×0.8cm,広基性で軟らかく,波動があり,正常粘膜に覆われていた.病理組織診断にて嚢胞性リンパ管腫と診断された. 大腸リンパ管腫の報告例は欧米では32例,本邦では自験例を含めて29例のみで,極めて稀な疾患であり,本症の診断には大腸内視鏡にて嚢胞性病変の特徴である透光性,波動,変形などの所見をとらえることが重要であると思われた.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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