日本消化器内視鏡学会雑誌
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Fulminant Amoebic Colitisの1剖検例
山下 智省児玉 隆浩沼義 則柳原 照生西村 秀男亀井 敏昭竹本 忠良
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1988 年 30 巻 2 号 p. 421-425_1

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抄録
 担癌生体に合併したアメーバ性大腸炎の劇症型の経験をたどった剖検例について報告した.患者は68歳女性.食道癌に対する放射線治療後,胸水貯留による呼吸困難のため入院治療中,顕性の下血を認めるようになった.下血量はしだいに増加し,イチゴジャム様を呈するようになった.大腸内視鏡検査では,全周性のタコイボ状の隆起性病変と比較的浅い潰瘍の多発を認め,生検組織で壊死物質に混じてEntamoeba histolyticaの虫体と思われる構造物を認めた.アメーバ赤痢と診断し,Metronidazoleの投与を行ったが,下血は増加し続け,全身状態は徐々に悪化し,入院36日目に死亡した.剖検では横行結腸から直腸に至る無数の隆起性病変と潰瘍を認めた. 以上のように,本邦では劇症型の経過をとるアメーバ性大腸炎の報告は少なく,稀な症例と思われる.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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