抄録
症例1は53歳,男性.黒色便のため大腸X線検査を施行したところ.回盲部近傍に径約1.5cmの平滑な粘膜下腫瘍を認め,体位変換により有茎から無茎へと変化し,空気量および圧迫の程度でも容易に形状が変化した.大腸内視鏡検査では,腫瘤は表面平滑で,周辺粘膜と同様の色調があったが,やや青みを帯びた透明感を認めた.鉗子圧迫,送気では容易に変形を認めた.以上の所見より大腸リンパ管腫と診断し,外科的に腫瘍切除をおこなった.症例2は69歳,女性.下腹部痛の精査にて,S状結腸に症例1に類似した病変を認めた.広基性で丈が低く,体位変換や送気では形状の変化はさほど見られなかったが,色調などからリンパ管腫と診断し,内視鏡的ポリペクトミーをおこなった.広基性で丈の低いリンパ管腫においては,脂肪腫との鑑別が必要であると思われたが,色調,透明感の有無,鉗子圧迫による弾性の差などが鑑別点となりうると思われた.