抄録
症例1は32歳の女性.下痢と発熱で入院.大腸内視鏡および注腸X線検査で横行結腸の縦走潰瘍,また同部位の生検組織で肉芽腫を認めたため,Crohn病と診断した.ステロイドとサラゾピリンの投与で症状が軽快した.症例2は60歳.症例1の母親で,38歳時に潰瘍性大腸炎と診断され,43歳イレウス症状のため横行結腸,S状結腸吻合術を受け,さらに大量の下血のため52歳に全結腸切除術を受けた.術後経過は良好であった.2症例ともHLA検索ではBW52,DR2が陽性であった. 本邦では炎症性腸疾患の家族内発生例は少なく,とくに潰瘍性大腸炎とCrohn病の組合わせの家族内発生はまれであるので,貴重な症例と考え報告する.