抄録
症例は65歳の男性.昭和49年3月他院の胃内視鏡検査にて多発性胃ポリープを指摘された.昭和61年5月,心窩部不快感を主訴として当科受診.上部消化管造影・内視鏡検査にて,胃体部の腺境界と思われる領域に,帯状に山田II型・III型の最大径20mmまでの大小の多発性隆起性病変を認め中村II型のポリープと考えた.また,ポリープに混在して胃体下部小彎には襞集中を伴う浅いIIc様陥凹がみられ同部に接するポリープは褪色平低化していた.同部よりの生検から高分化型腺癌が認められた.切除胃肉眼所見では,腺境界域に長径3mm~20mmの頂部に糜爛を有する大小70個の半球状隆起性病変が多発していた.また胃体下部小彎には浅い褪色陥凹とポリープの褪色平低化がみられた.組織学的には,胃体下部小彎に25×17mm,深達度mのIIc+IIa型早期胃癌がみられ,IIa部ではポリープ癌の形態を示していた.また前庭部には2mm大の微小癌がみられた.中村II型のポリープに多発早期胃癌を合併した症例と考えられた.