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崎田 隆一, 永山 剛久
1989 年 31 巻 10 号 p.
2573-2585
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
切除大腸癌30例,内視鏡的ポリペクトミーで剔除した腺腫30例,腺腫内癌10例,正常大腸上皮30例を対象として4種類の腫瘍マーカー(CEA,CA19-9,EMA,CA125)の免疫組織化学的な検出率の比較検討を行った.CA125は全例陰性で大腸とは無関係であった.CEAは全例に高率に検出されたが,染色強度は癌で強く,次いで腺腫,正常上皮の順であった.CA19-9は癌と腺腫で高率に検出されたが,正常上皮では50%弱であった.EMAは癌で高率に検出されたが,腺腫では低率で,正常上皮では全例陰性であった.CEA,CA19-9,EMA3者とも,癌では低分化型の癌で染色性が低い傾向を示した.腺腫内癌では3者とも癌の部位が腺腫の部位に比し強い染色性を示した.以上よりadenoma-carcinoma sequenceの存在が示唆されたとともに,EMAの大腸腫瘍に対する特異性およびCEA,CA19-9,EMA3者併用の大腸腫瘍診断に対する有用性が示唆された.
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鈴木 安名, 升田 和比古, 平尾 雅紀, 原田 一道, 岡村 毅與志, 並木 正義, 須田 昌夫
1989 年 31 巻 10 号 p.
2587-2593
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
東芝社製電子スコープシステムを改造し,日常の診療で使用可能な赤外線電子スコープを試作した.赤外線光源は通常のキセノン光源から熱徽収フィレターをはずし,可視光除去フィルターIR-76またはIR-80臓着したものを用いた.対象とした症例は上部消化管内視鏡検査80例である.胃体部前壁または穹窿部後壁を基準とし,ここに線状の粘膜下血管像が観察された割合は80例中66例,83%であった.残りの14例では体部腺領域に点状の集合細静脈が観察された.分化型の早期胃癌では腫瘍部分が低輝度に観察され,周囲の粘膜下血管との位置関係が明確になりER-HSEなどの内視鏡的腫瘍切除法を安全に行う上で有用であった.一方,改良すべき点として光量が不十分なこと,オートライトコントロール機構がないことなどである.
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宮原 透, 永尾 重昭, 土居 利光, 金沢 雅弘, 渡辺 圭三, 川口 淳, 小林 正彦, 国富 道人, 河野 俊彦, 小山 洋, 日野 ...
1989 年 31 巻 10 号 p.
2595-2604_1
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
可視光域の各スペクトル帯域別に,病変の描出能に差があるか否かについて検討する目的で,面順次方式電子スコープのビデオプロセッサーシステムセンター内の画像信号出力部に改変を加え,R(Red),G(Green),B(Blue),各々別個のアナログ信号及び通常の映像信号を任意に選択取り出し可能となるようにした.これによりリアルタイムに得られたR.G.B.各々別個の画像と,通常光における画像とを比較し,胃潰瘍18例,十二指腸潰瘍16例,胃癌8例,胃ポリープ17例,各種胃炎26例,その他10例について検討を加え以下の結果を得た.G信号のみによる画像は,構造1青報,輝度変化情報の多いこと,最小弁別域が同スペクトル内に存在すること,人の視感度によく適合することなどにより,粘膜微細構造の描出に最も優れていた.B信号のみにより得られた画像は,信号量の低いこと,輝度ひずみの影響も加わり画像全体は暗くなり粘膜微細構造の描出は困難であった.R信号のみにより得られた画像では,R成分の組織透過性が,G成分,B成分に比較して高いことにより粘膜微細構造の描出は不可能であったが,R成分で得られる画像の,延長線上に赤外線による観察があることを示唆する結果を得た.
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吉本 英夫, 池田 靖洋, 黒田 雄志, 真栄城 兼清, 田淵 正延, 田中 雅夫, 松本 伸二, 岡本 潔, 志村 秀彦
1989 年 31 巻 10 号 p.
2605-2615
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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経皮的胆道鏡の手技を用い,16例の胆嚢結石症例に非観血的除去を試みた.結石が胆道鏡の挿入ルートより大きい場合は,電気水圧結石破壊法(EHL)による砕石を併用した.胆道鏡の挿入経路は,経皮経肝胆嚢瘻孔12例,経皮的胆道瘻孔2例,外科的外胆嚢瘻孔2例,であった. 16例中12例にEHLを試み,11例の結石破壊に成功した.4例はバスケット截石のみを行った.その結果,完全截石13例,不完全截石2例,截石不成功1例,の成績であった.不完全截石や截石不成功の理由は,胆道鏡の到達不能2例,截石期間中の胆嚢萎縮1例であった.胆道ドレナージ施行日から截石終了までの平均日数は52±29日であった.合併症として,胆道出血2例,截石後の悪寒・発熱2例を経験したが,重篤なものはなかった.截石後1年以上経過した12例中,2例は他病死したが,残り10例は無症状に経過していた.超音波による追跡を行った8例中7例は再発を認めず,1例にのみ胆砂の出現を見たが利胆剤の投与にて消失した. 胆嚢結石症に対する胆道鏡下截石術は,手技の煩雑さ,治療期間の長さ,結石再発の可能性,などの問題を有し,現時点では外科手術に代われるものではない.しかし,confluence stoneは本法の良い適応と思われた.また,合併症が少なく,外科治療の困難な一部のpoor-risk症例には適応できると考えられた.
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鶴田 修, 有馬 信之, 入江 章, 池田 英雄, 大曲 和博, 光山 慶一, 青木 俊親, 池園 洋, 井手 耕一, 長田 英輔, 佐々木 ...
1989 年 31 巻 10 号 p.
2616-2626
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
764症例にcolonoscopyを施行し(盲腸到達率=92.6%),発見し得た538隆起性病変について検討した.内訳は腺腫361病変(67.1%),非腺腫153病変(28.4%),早期癌24病変(4.5%)である.病理組織所見を腺腫,非腺腫,早期癌に分けてみると直腸では腺腫が少なく非腺腫が多く,早期癌はS状結腸および直腸で77.3%を占めていた.発見全病変の大きさは腺腫,非腺腫ともに5mm以下のものが最も多く,大きさを増すにつれその数は減少していくが,非腺腫の方がより小さいものが多かった.腺腫,非腺腫共に大きさを増すにつれ形態的にくびれをもつものが多くなり,また発赤調を呈するものが増してくるが,腺腫の方がより小さいうちから茎を有し易く,また発赤調を呈する傾向にあった.早期癌は扁平隆起11病変,亜有茎性2病変,有茎性11病変であり,扁平隆起は隆起全体が癌,または隆起の50%以上が癌成分のものが多く,有茎性病変は隆起の50%以上が腺腫成分のものが多かった.このことは癌発生と進行癌への進展で両型の違いを示唆し,早期癌発見において有茎性のみならず扁平隆起の発見がさらに重要であると考えられた.
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―特に占居部位の意義について―
日野 真一, 隆 元英, 五十嵐 正彦
1989 年 31 巻 10 号 p.
2627-2632_1
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
門脈圧亢進症214例および健常者50例を対象とし,胃静脈瘤の内視鏡的検討を行った.噴門部および噴門直下小彎(噴門部,Lc)では静脈を認めれば静脈瘤と判定し,穹窿部(Lf)では径3mmを超える静脈を静脈瘤と判定した.これにより,門脈圧亢進症の50.5%に胃静脈瘤を認めた(Lc静脈瘤を有する例は40.2%,Lf静脈瘤例25.7%).Lc静脈瘤は食道静脈瘤を有する例にのみ認められ,Lc静脈瘤症例の87.2%にF
2以上の食道静脈瘤が認められた.Lc静脈瘤上に発赤,白苔,出血を認めた例では,食道静脈瘤にもR=Csignを認めることが有意に多かった.また,内視鏡的食道静脈瘤硬化療法により食道静脈瘤の著明改善が認められた例では,Lc静脈瘤の改善も認められた例が有意に多かった.以上より,Lc静脈瘤は食道静脈瘤と密接な関係を有すると考えられた.Lf静脈瘤は食道静脈瘤との関係が乏しかった.
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―内視鏡検査後早期発症例と後期発症例の比較検討―
渥美 正英, 高升 正彦, 胡井 智, 伊勢谷 和史, 小原 尚之, 小笠原 宏行, 高顕 純平, 高祖 均, 赤木 博, 布施 好信, 児 ...
1989 年 31 巻 10 号 p.
2633-2638_1
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
われわれは最近5年間に延べ約49,200回の胃内視鏡検査を施行し,検査後明らかな誘因なく急性胃粘膜病変(AGML)あるいは急性胃・十二指腸粘膜病変(AGDML)の発症をみた症例を15例(0.03%)経験した.年齢は30歳から61歳で平均49.7歳,性別は男性11例,女性4例であった.病変部位では前庭部が最も多く,ついで十二指腸球部であった.初回内視鏡検査後に発症した例がほとんどで,検査時の内視鏡所見では,びらん性胃炎が最も多かった.内視鏡検査後より発症までの期間は1日から8日で平均5.0日であった.このうち検査後24時間以内に発症した2症例は自覚症状が軽度で病変は胃体部から穹窿部にかけてみられたが,それ以外の症例は3日目以降に強い心窩部痛や嘔吐にて発症し前庭部や十二指腸球部を中心に病変がみられており,内視鏡検査後のAG(D)MLには臨床的に異なる2種類の病態が存在する可能性が示唆された.
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芦田 寛, 琴浦 義尚, 青木 郁二, 高木 一光, 福田 正春, 西岡 昭彦, 石川 羊男, 宇都宮 譲二
1989 年 31 巻 10 号 p.
2641-2646_1
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
教室の胃静脈瘤症例10例の治療成績より,胃静脈瘤に対する治療法を検討した.急性出血を認めた4例に対し,内視鏡的硬化療法で2例,経皮経肝的静脈瘤塞栓術で1例,脾動脈塞栓術で1例に止血を試みたが,硬化療法の1例のみ止血可能であった(後にHassab手術を付加).止血不能2例に対しては緊急手術で止血しえたが,術後早期に肝不全で失い,現在生存中は1例である.残り6例のうち,4例に対しては待期的手術療法で,1例は待期的硬化療法で対処し,1例は未出血で経過観察中である.再出血を手術療法と硬化療法に1例ずつ認めた.現在生存中は手術療法症例2例と未出血の1例である.硬化療法有効例の腹部血管造影の検討より,胃腎短絡路を有さない胃静脈瘤症例に対する硬化療法は効果が期待できるが,現時点では手術療法(Hassab手術)が胃静脈瘤症例に対する適切な治療法といえる.
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長谷部 修, 嶋倉 勝秀, 松田 至晃, 滋野 俊, 牛丸 博泰, 宮田 和信, 赤松 泰次, 山口 孝太郎, 古田 精市
1989 年 31 巻 10 号 p.
2647-2655
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
各種膵胆道疾患に対するENBDの有用性につき検討した.対象はENBDを施行した171例で,減黄目的症例では良性疾患41例中40例(97.5%),悪性疾患54例中38例(70.3%)に有効であったが,肝門部胆管狭窄症例での有効率は26例中14例(54%)と低かった.ERBDチューブ交換時の胆管洗浄目的51例では平均14日間のENBD後ERBDチューブを再挿入した.乳頭切開後の結石嵌頓予防目的25例では胆管炎の悪化・結石の再嵌頓はなく全例に有効であった.平均1日胆汁排出量は389±250m1であり,良性疾患においては結石嵌頓予防目的より減黄目的の方が,悪性疾患においては減黄目的より胆管洗浄目的の方が胆汁排出量は多かった.またカテーテルサイズが大きくなる程胆汁排出量も多い傾向がみられたが,5~7.2Fr間での統計学的有意差は認められなかった.合併症として出血・hemobiliaによるカテーテル閉塞を各1例経験した.ENBDは比較的容易かつ安全に施行できる有用性の高いドレナージ法であるが,肝門部胆管狭窄症例ではドレナージ不良なことも多く,PTBDを優先的に施行した方がよい場合がある.
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吉田 利明, 柏木 昭人, 高橋 昭彦, 山本 雅敏, 長谷川 辰雄, 山中 寛紀, 坂野 俊彦, 山本 ゆかり, 相原 真理子, 澤田 淳 ...
1989 年 31 巻 10 号 p.
2656-2662_1
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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症例1は46歳男性.主訴は嚥下困難食道造影にて紡錘型GradeIIの食道アカラシアと診断し,Microvasive社製上部消化管狭窄用Rigiflex TTS balloon dilator(最大拡張外径10~18mm)を用い内視鏡直視下にバルーン拡張術を5回施行した.術後より自覚症状の改善,体重増加を認め,食道造影でも最大横径は5.5cmから4.5cmに縮小した.症例2は,51歳女性.主訴は胸部つかえ感.食道造影でS状型GradeIIの食道アカラシアと診断し,外来で初めから最大拡張外径18mmを用いて内視鏡直視下バルーン拡張術を施行した.術後より食事摂取可能となり,食道造影でも最大横径は5cmから4cmへと減少が見られた.内視鏡直視下バルーン拡張術(Rigiflex TTS balloon dilator)は,直視下に操作および粘膜面の観察が可能であり,外来でも施行可能な極めて安全な方法と考えられた.
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伊藤 均, 真玉 寿美生, 藤井 保治, 松本 偉男, 菅 知也, 岡田 豊次, 五月女 茂, 福島 範子
1989 年 31 巻 10 号 p.
2665-2669_1
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
蛍光抗体補体法及び酵素抗体ABC法で胃生検組織からTreponemapa llidumを証明した胃梅毒の2例を経験した.症例は32歳と26歳の男性で,心窩部不快感,嘔吐にて受診した.ともにTPHA1,280倍と高値で,皮膚所見よりII期梅毒と診断された.上部消化管検査で胃角部から前庭部を中心に不整形の浅い潰瘍を認め,浮腫が強く易出血性であった.胃梅毒はその形態の複雑さから画像診断のみでの確定診断は困難である.胃生検組織からのTreponema pallidumの証明は,胃梅毒診断のために不可欠であり,免疫抗体法,特に酵素抗体ABC法は診断に有用である.
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坂本 裕史, 大江 安男, 落合 亨, 武井 崇, 鈴木 隆, 角本 芳隆, 遠藤 高夫, 矢花 剛, 谷内 昭
1989 年 31 巻 10 号 p.
2670-2676_1
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
今回,われわれは比較的稀な食道原発悪性黒色腫と考えられる1例を経験した.症例は71歳男性で,約3週間前より嚥下困難,体重減少,食欲不振を自覚して来院した.上部消化管X線および内視鏡検査で,ImからEiにかけて黒色の表面不整な隆起性病変を認め,生検で腫瘍細胞の増殖と細胞内に暗褐色の色素顆粒が認められた.他の部位の消化管粘膜や皮膚には異常な色素沈着は認められなかった.食道原発悪性黒色腫を強く疑い,手術を施行した.摘出標本は,ImとEiを占める7.5×4.5×1.5cmの表面結節状の不規則な凹凸を示す,一部褐色調を呈する黒色腫瘤で,組織学的にjunctional activityが認められた.本症例は過去28年間に本邦で集計された第63症例目の食道原発悪性黒色腫と診断した.
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谷口 英人, 小泉 浩一, 山本 仁志, 中島 幸裕, 星野 清志, 菊地 直人, 梅谷 薫, 中村 正樹, 上野 秀雄, 木村 佳苗
1989 年 31 巻 10 号 p.
2677-2680_1
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
54歳男性,昭和63年11月11日吐下血を主訴に当院へ緊急入院した.入院時緊急内視鏡検査にて穹窿部に露出血管を認めDieulafoy潰瘍と診断しHS-Eによる内視鏡的止血術を施行し止血した.その時点では胃角には何ら病変も認めなかった.11月14日嘔気,気分不快とともに血圧60/30mmHgと患者はショック状態となり再度緊急内視鏡を施行したところ穹窿部の病変からの出血はなく,胃角部に血液の湧出する露出血管を認め,Dieulafoy潰瘍と診断し再度HS-Eによる止血術を施行.以後止血術を繰り返し永久止血となった.本例のように同時期に穹窿部と胃角にDieulafoy潰瘍を認めた例はこれまで報告がない.また重複Dieulafoy潰瘍が異時性に出血を認めたこと,またDieulafoy潰瘍の発生する直前の胃粘膜を観察できたことは非常に興味深いと考え報告するとともに,本症に対するHS-Eによる内視鏡的止血術の有用性を強調した.
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梅垣 英次, 鄭 鳳鉉, 林 勝吉, 芦田 潔, 平田 一郎, 大柴 三郎, 岩本 伸二, 岡島 邦雄
1989 年 31 巻 10 号 p.
2683-2687_1
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は65歳の男性.昭和49年3月他院の胃内視鏡検査にて多発性胃ポリープを指摘された.昭和61年5月,心窩部不快感を主訴として当科受診.上部消化管造影・内視鏡検査にて,胃体部の腺境界と思われる領域に,帯状に山田II型・III型の最大径20mmまでの大小の多発性隆起性病変を認め中村II型のポリープと考えた.また,ポリープに混在して胃体下部小彎には襞集中を伴う浅いIIc様陥凹がみられ同部に接するポリープは褪色平低化していた.同部よりの生検から高分化型腺癌が認められた.切除胃肉眼所見では,腺境界域に長径3mm~20mmの頂部に糜爛を有する大小70個の半球状隆起性病変が多発していた.また胃体下部小彎には浅い褪色陥凹とポリープの褪色平低化がみられた.組織学的には,胃体下部小彎に25×17mm,深達度mのIIc+IIa型早期胃癌がみられ,IIa部ではポリープ癌の形態を示していた.また前庭部には2mm大の微小癌がみられた.中村II型のポリープに多発早期胃癌を合併した症例と考えられた.
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米島 学, 卜部 健, 老子 善康, 稲垣 豊, 木谷 恒, 鵜浦 雅志, 小林 健一, 服部 信, 北川 浩文
1989 年 31 巻 10 号 p.
2688-2693_1
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
患者は27歳,男性.上腹部痛にて胃内視鏡検査を受け,胃粘膜下腫瘍と診断されるも放置.その後も,血清アミラーゼの上昇を伴う上腹部痛を繰り返すため精査目的で入院.超音波内視鏡検査(EUS)では胃壁第3層内に存在する腫瘤像を認め,導管を思わせる管状,輪状の管腔構造を有することより,胃迷入膵と診断した.さらに,腫瘤内部には不整のlow echo areaも存在した.EUSの経過観察ではlow echo areaは増大し,辺縁明瞭なcystic areaとなり,腫瘤の大部分を占めるようになったことより,迷入膵の膵炎による仮性嚢胞形成と診断した.内視鏡下の嚢胞穿刺により得られた液は各種膵酵素著明高値より,膵液と考えられた.レーザー照射により嚢胞上の胃粘膜を切開し,嚢胞液の排出をEUSにて確認後,外来通院とした. 本例は経時的に施行したEUSにより嚢胞形成が確認された胃迷入膵の初めての症例であり,EUSの臨床的有用性を再確認し,ここに報告した.
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藤巻 英二, 神谷 亮一, 狩野 敦, 小野 貞英, 村上 晶彦, 寺崎 公二, 千葉 俊美, 鈴木 明彦, 安宅 龍一郎, 斎藤 裕, 折 ...
1989 年 31 巻 10 号 p.
2694-2703
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
患者は76歳男性で,心窩部痛を主訴とし,1987年3月16日当科を紹介され,入院した.US,CT,血管造影で体尾部を中心とした膵癌と考えられたが,ERCPで主乳頭から造影したところ,不整のない樹枝状の短小膵管と正常の胆道像のみが得られた.膵管非癒合を疑い副乳頭から造影すると,開口部より約4cmで不整断裂を示した.いずれの乳頭からの造影でも両膵管系の交通は認められず,本症例は膵管非癒合に合併した背側膵癌と診断された.剖検では8×6×4cmの全体癌で,組織学的には中分化型管状腺癌であり,慢性膵炎の有無は判定できなかった.本邦における膵管非癒合に合併した膵癌の報告は,本症例が17例目にあたり,そのうち1例を除く全てが背側膵に発生していた.膵管非癒合に癌の合併が多いか否かについては背側膵炎の問題とともに明かではなく,今後の症例の積み重ねが必要であると思われた.いずれにしても,膵管非癒合が疑われた際には膵炎のみならず癌の存在も考慮し,副乳頭からの背側膵管造影を積極的に行うべきであると考えられた.
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老子 善康, 西村 浩一, 村田 高志, 米島 学
1989 年 31 巻 10 号 p.
2704-2708_1
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は71歳男性,食欲不振にて来院.2年前約10mmの十二指腸腺腫を指摘されるも放置.上部靴管X線検査及び内視鏡検査にて,十二指腸球後部壁に約15mmの山田III型の隆起性病変を認め,内視鏡的ポリペクトミーによる切除を行った.組織学的には,2年前にはその部分生検にてGroupIII(Adenoma)と診断され,今回の切除標本では,粘膜内にとどまる早期癌で高分化型から中鞭分化型腺癌が混在し間質浸潤は認めなかった.以上より,内視鏡的ポリペクトミーによる根治が可能と判断した. 本症例とともに,本邦で報告された早期十二指腸癌58例の診断,発生母地,治療法について検討した.
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森石 真吾, 中西 敏夫, 梶山 梧朗, 山野上 路夫, 土谷 太郎
1989 年 31 巻 10 号 p.
2709-2713_1
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
マクログロブリン血症の腹腔鏡及び肝生検所見の報告は極めて稀である.われわれは腫瘍細胞が肝臓への浸潤を示したWMGの1例を経験した.症例は57歳男性,肝機能障害にて入院し,精査の結果WMGと診断された.腹腔鏡では肝表面は比較的平滑だが暗褐色調を呈し,リンパ管拡張を著明に認めた.肝生検所見では基本構造は保たれているものの,グリソン鞘に一致してリンパ球様細胞の著しい浸潤が見られた.この生検組織に免疫染色を試み,これらリンパ球様細胞は抗IgM,抗k抗体で染色された.また入院当初より蛋白電気泳動では明らかなM-bowを呈し,尿中ベンスジョーンズ蛋白も陽性を示したため,血液学的検索も同時に進めた結果WMGと診断した.本疾患の肝臓への腫瘍細胞浸潤は,剖検などにおいては比較的詳細に検討されているものの,腹腔鏡や生検による肝臓の所見に対する報告は極めて少なく,若干の文献的考察を加えて報告した.
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佐藤 和一, 林 義峰, 小松 寛治
1989 年 31 巻 10 号 p.
2714-2718_1
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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急性出血性膵炎の早期診断はいまだに困難であり,治療は外科的療法が主体となっている.われわれは79歳女性の急性膵炎に対し早期に緊急腔鏡検査を行い急性出血性膵炎と診断した.同時に腹腔鏡直視下に2本のドレーンを腹腔内に挿入し,同ドレーンよりメシル酸ナファモスタット生食液で10時間にわたり腹腔内を持続洗浄した.さらにメシル酸ナファモスタットを経静脈的に短期大量投与,大量補液,血清蛋白の補充,2次感染の予防等の治療の併用により良好な臨床経過をたどった.腹腔鏡直視下持続腹腔洗浄が重症膵炎の治療に有効であった1例である.
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森 能史, 傍島 淳子, 餅 忠雄, 奥田 宗久, 金谷 哲郎, 林 邦雄, 太田 正治, 片岡 裕, 島本 和彦, 児玉 正
1989 年 31 巻 10 号 p.
2721-2727_1
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
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フリー
26歳男性,膀胱内の原因不明の腫瘤として,その原因の検索中に気尿及び糞尿の出現と腸閉塞症状をきたした.緊急大腸内視鏡検査で,S状結腸の閉塞とcobble stone像を認め,Crohn病と診断した。横行結腸に人工肛門を造設し,手術後の注腸X線像で,回腸S状結腸―膀胱の瘻孔を確認した.エレンタール療法及び,Salazopyrinによる治療後,人工肛門閉鎖術を施行した.切除回腸壁に,非乾酪性肉芽腫が観察された.
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重松 明博, 飯田 三雄, 富永 雅也, 渕上 忠彦, 村上 学, 伊藤 英明, 岩下 明徳, 藤島 正敏
1989 年 31 巻 10 号 p.
2728-2733_1
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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症例は65歳の女性.約4年間に4回の下血を繰り返していた.消化管X線検査では,十二指腸と空腸に多発憩室を認め,他には出血源となる病変はみられなかった.空腸憩室のうち4個は大型で,特に肛門側の2個では憩室入口部に一致して管腔の狭窄と壁のひきつれ像があり,潰瘍の存在が示唆された.このため同部よりの出血と考え開腹術を行った.術中内視鏡検査で憩室入口部に潰瘍を確認し,その他の憩室をも含めた空腸切除術を行った.病理学的には,憩室は仮性憩室であり,潰瘍はUl-IIの開放性潰瘍であった. 空腸憩室からの出血例は稀であり,特に本例の如く,憩室入口部に潰瘍を認めた報告はない.
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稲垣 貴史, 森瀬 公友, 飯塚 昭男, 嶋田 満, 木村 昌之, 岩瀬 弘明, 金山 和広, 斉藤 祐一郎
1989 年 31 巻 10 号 p.
2734-2740_1
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
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患者は発熱と体重減少を主訴として来院した67歳女性である.内視鏡検査で回腸末端に不整形の潰瘍とpolypoid lesionが認められ,生検組織の免疫組織化学的検索により術前に回腸原発B細胞性悪性リンパ腫と診断された.また,すべてのリンパ腫細胞がIL-2R(interleukin-2 receptor)陽性となった.Ga-scintigraphy,US,CT等で所属リンパ節以外に転移は認められず,Naqvi分類によるstageIIと考えられた.本症例は相対的治癒切除が行われ術後の化学療法が行われたが,約2カ月で急激に再発して死亡し,IL-2R陽性のB細胞性リンパ腫もATL(adultT-cell leukemia/lymphoma)と同様予後不良である可能性が示唆された.術前に診断された小腸悪性リンパ腫は稀であり,内視鏡下生検組織を用いたリンパ球サブセット及びIL-2R抗原の検討が悪性リンパ腫診断と予後の推定に有用と考えられた.
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大城 宏之, 横山 泰久, 横山 功, 菊池 学, 水田 正雄
1989 年 31 巻 10 号 p.
2741-2744_1
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
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Crohn病類似病変を合併した直腸癌の1例を経験したので報告する.症例は42歳,男性.排便困難,粘血便を主訴に来院し,直腸Crohn病を合併した直腸癌と診断された.切除標本にて直腸に2型のpm癌とその周辺の肉芽腫を伴うCrohn病類似の全層性炎症病変を認めたが,これは癌の随伴病変と考えられた.
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P. G. Perakos, T. F. Scheer
1989 年 31 巻 10 号 p.
2747-2753
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
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Local treatment of squamous cell carcinoma of the esophagus is only modestly successful. To increase local control, we have developed a procedure to inject a boost dose of radiation into the tumor bed after completion of external beam radiotherapy. The boost dose is given with
32P, a readily available radiocolloid.
32P is a pure emitter and poses no significant radiation hazards. It can penetrate 10-15 mm into the tumor mass and has a half-life of 14.3 days. After determination of the volume to be treated, the colloid is injected with endoscopic guidance using the same technique as used in injection sclerotherapy of esophageal varices. We use the Pentax FG 34 JA operating gastroscope and a Bard disposable 0.5 cm 25 Ga retractable injection sclerotherapy needle. We deliver 150-200 microCurie of
32P colloid diluted to 20 ml with normal saline at 10 to 20 injection sites. This boosts the radiotherapy dose of 5, 500-6, 000 cGy to the range of 7, 500-8, 000 cGy. We have treated five patients so far, with length of follow-up ranging from 8-28 months. Local control and survival results have been excellent and no complications have been associated with the procedure. A combination of external beam radiotherapy and interstitial boost treatment with colloidal
32P appears to be a safe and effective method of managing squamous cell carcinoma of the esophagus.
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中澤 三郎
1989 年 31 巻 10 号 p.
2754
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
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1989 年 31 巻 10 号 p.
2755
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
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加藤 延夫
1989 年 31 巻 10 号 p.
2756-2757
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
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―アンチ・サイトプロティクテブ・サブスタンス―
小澤 高将
1989 年 31 巻 10 号 p.
2758-2761
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
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中澤 三郎
1989 年 31 巻 10 号 p.
2762-2768
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
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1989 年 31 巻 10 号 p.
2769-2789
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
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1989 年 31 巻 10 号 p.
2790-2811
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
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1989 年 31 巻 10 号 p.
2812-2828
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
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1989 年 31 巻 10 号 p.
2829-2840
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
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1989 年 31 巻 10 号 p.
2841-2859
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
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1989 年 31 巻 10 号 p.
2860-2876
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
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1989 年 31 巻 10 号 p.
2877-2891
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
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1989 年 31 巻 10 号 p.
2892-2908
発行日: 1989/10/20
公開日: 2011/05/09
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