1989 年 31 巻 12 号 p. 3180-3193
食道内視鏡検査と予防的食道静脈瘤硬化療法によりコントロールを受けた肝硬変症259例(肝癌合併81例を含む)の予後調査を実施し,5年生存率,直接死因及び死亡時年齢を直接死因別に検討した. その結果,5年生存率は71.8%であり最近の諸家の報告とほぼ一致したが,直接死因では食道静脈瘤破綻による出血死が3.3%と著明に少なく,肝不全死も12.2%と低率であった.その反面,肝癌死は72.2%と著しく高率となり,肝疾患以外の他疾患死も20.2%に達した.また,直接死因別にみた死亡時年齢では,出血死と肝不全死の合計群は60.3歳,他疾患死は66.5歳と順次に高年齢であった. これらの成績は,出血死と肝不全死の減少に伴う肝癌死の著増と,更に,肝癌をも含める肝疾患死を免れた症例が他疾患死に至る現状を示したものと推定された.