日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
予防的食道静脈瘤硬化療法の意義―肝硬変症の予後に関する検討から―
雫 稔弘福本 四郎島田 宜浩
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 31 巻 12 号 p. 3180-3193

詳細
抄録

 食道内視鏡検査と予防的食道静脈瘤硬化療法によりコントロールを受けた肝硬変症259例(肝癌合併81例を含む)の予後調査を実施し,5年生存率,直接死因及び死亡時年齢を直接死因別に検討した. その結果,5年生存率は71.8%であり最近の諸家の報告とほぼ一致したが,直接死因では食道静脈瘤破綻による出血死が3.3%と著明に少なく,肝不全死も12.2%と低率であった.その反面,肝癌死は72.2%と著しく高率となり,肝疾患以外の他疾患死も20.2%に達した.また,直接死因別にみた死亡時年齢では,出血死と肝不全死の合計群は60.3歳,他疾患死は66.5歳と順次に高年齢であった. これらの成績は,出血死と肝不全死の減少に伴う肝癌死の著増と,更に,肝癌をも含める肝疾患死を免れた症例が他疾患死に至る現状を示したものと推定された.

著者関連情報
© 社団法人日本消化器内視鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top