日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
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肝癌類似の組織所見を呈したAlpha Fetoprotein産生胃癌の1例
―" 胃の肝様腺癌"の1例―
竹内 護山岡 伸三松村 恭司小原 朝彦西木 茂前川 真輝
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1989 年 31 巻 2 号 p. 442-448_1

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抄録
近年,AFP産生胃癌の報告が増加しているが,このうち血中Alpha-fetoprotein(AFP)高度高値で組織学的に肝細胞に類似するものが散見される.われわれは肝癌類似の組織所見を呈したAFP産生胃癌の1例を経験したので報告する.症例は62歳,男性.主訴は全身倦怠感.血清AFP値は61,200ng/mlと高度高値を示し胃内視鏡検査および胃X線検査にて胃体上中部前壁にBorrmann 1型の腫瘍を認めた.肝転移はなく,肝硬変の合併はなかった.S1,N0,P0,H(-)で,胃全摘+脾合併切除術を施行した.術後血清AFP値は正常化した.病理組織学的には腫瘍表面は凝血塊と壊死組織で厚く被われ,豊かな好酸性胞体を持つ肝細胞様腫瘍細胞が充実性胞巣を形成しており,表層では腺腔形成や乳頭状増殖を示す部位もみられた.ssα,ly0,v0,n1-3(-)であった.酵素抗体法にて腫瘍細胞内にAFPおよび各種肝細胞マーカーの局在を認めた.以上より石倉らのいう"胃の肝様腺癌"の1例と考えられた.術後2年6カ月現在再発の兆候なく生存中である.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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