抄録
症例は67歳,男性.食欲不振と悪心を主訴として入院.胃X線検査にて幽門前庭部の平滑な隆起性病変と十二指腸の変形を認め,胃内視鏡検査では胃前庭部後壁に粘膜下腫瘤がみられた.選択的胃十二指腸動脈造影では血管増生域と腫瘍濃染像を認めた.症状が進行するため手術を施行し,胃前庭部後壁に3.0×3.0cmの粘膜下腫瘍を認めた.組織学的検索では,腫瘍は前庭部の粘膜下層と固有筋層にあり,一層の異型性のある立方上皮よりなる管腔構造の増殖がみられた.腫瘍には腺房と導管組織よりなる異所性膵組織が混在していた.被覆胃粘膜は正常であった.以上より胃の迷入膵より発生した腺癌と診断した. 胃の迷入膵より発生した腺癌はきわめて稀であり,われわれの症例も含めて15例が本邦で報告されていた.それらはほとんどの症例で,胃前庭部に存在しており,組織学的には管状腺癌が多かった.