日本消化器内視鏡学会雑誌
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萎縮性胃炎の進展におけるCampylobacter pyloriの意義
重枝 正樹
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1989 年 31 巻 4 号 p. 821-829

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抄録
 慢性胃炎とくに萎縮性胃炎におけるCampylobacter pylori(以下C.pylori)の意義を明らかにするために,萎縮性胃炎の広がりすなわち内視鏡的萎縮パターンおよび腸上皮化生の広がりとC.pyloriの検出率を検討し,さらに,経過観察による萎縮パターンおよび腸上皮化生の広がりの推移とC.pyloriの検出率を検討した.萎縮パターンとその進展は内視鏡的Congored法を用い,腸上皮化生の広がりとその進展はメチレンブルー染色法を用いて明らかにした.その結果,C.pyloriの検出率は,萎縮パターンのC2,C3,O1,O2で高い傾向がみられ,C1,萎縮の進行したO3,O4で低い傾向がみられた. また,腸上皮化生の広がりにおける検討では,腸上皮化生の拡がった症例でC.pyloriの検出率が低い傾向がみられた. 一方,内視鏡的萎縮パターンの経過観察においては,萎縮境界が口側へ移動した症例では,C.pyloriの検出率が高く,萎縮境界の変化のみられなかった症例では,C.pyloriは検出されなかった. 以上より,C.pyloriの存在は,背景胃粘膜の萎縮性変化,とくに腸上皮化生の程度に影響され,一方で,萎縮パターンの進行に,C.pyloriが関与している可能性があることが考えられた.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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