1989 年 31 巻 4 号 p. 961-965
膵管胆道合流異常は,通常ERCP,PTC,術中胆道造影などのX線学的診断あるいはシネ胆道造影,胆道鏡胆道内圧検査などの機能的観察法によって診断される.今回,著者らはこれまで報告のなかったEUSによる本症の下部胆道・膵管の描出を試みた結果,両者の十二指腸壁外合流を診断し得た1例を経験したので報告する.症例は34歳,男性例で,超音波検査にて総胆管拡張を指摘され,ERCPにより胆管合流型の膵管胆道合流異常と診断された.EUSでは,膵内で狭小化した胆管と膵管,共通管を同一断層面上に描出でき,さらに膵管と胆管の膵実質内合流すなわち十二指腸壁外合流を証明することができた.通常の超音波検査法でも合流部を描出することが可能であるが,EUSは本例のように膵胆管系と膵,十二指腸,乳頭部の解剖学的位関係をより鮮明に把握でき,本症の診断に有用である.膵・胆管造影法とEUSを総合すればより的確な本症の診断が可能になるものと思われる.