抄録
症例は86歳の女性,約2カ月前からの嚥下困難を主訴として入院.食道エックス線検査でImからEi領域にかけて境界明瞭な腫瘤性病変を,また内視鏡検査で食道内腔のほとんどを占める表面凹凸不整の,一部びらんを伴ったポリープ状隆起を認めた.食道肉腫の診断で食道亜全摘,頸部食道・胃管吻合術を施行した.摘出標本で病変は7.0×4.0×2.2cmの大きさで,表面が大小の凹凸を示す,くびれのある腫瘤であった.病理組織学的に腫瘤の大部分は束状をなし交錯して配列する紡錘形細胞からなる肉腫組織で占められ,深部および水平面に沿って不規則な層状配列を示す中分化型扁平上皮癌(深達度mp)の増生がみられた.電顕的に肉腫様組織の細胞は大きな核と不規則に増生した粗面小胞体を有し,細胞間は胞体で接合しているが,稀にdesmosome様構造も認められた.しかしtonofilamentはみられず,積極的に上皮由来を示す所見は得られなかった.以上の根拠から食道癌肉腫と診断した.