日本消化器内視鏡学会雑誌
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Sigmoidofiberscopyによる大腸癌検診
―特に深部大腸病変有症例も含めた腺腫・早期癌症例の拾い上げ能,および検査間隔について―
矢作 和也荒井 泰道松本 純一
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1989 年 31 巻 6 号 p. 1480-1493

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抄録

1)sigmoidofiberscopyを1次スクリーニングとして用いた場合における,腺腫・早期癌症例の拾い上げ能を知る目的で,当初より全大腸の検査を行うことによって発見された症例を対象として検討した.腺腫・早期癌の個々の病変の50.9%が深部大腸(下行結腸一盲腸)に存在した.しかし症例別にみると,腺腫・早期癌症例の約半数は病変多発例であり,多発例では下部大腸(直腸,S状結腸)と深部大腸とにまたがって病変を有した症例が最も多かったため,単発例も併せ,深部大腸のみに病変を有した症例は27.2%と少なかった.特に6mm以上の病変を有した症例では,6mm以上の病変自体が深部大腸に少ないのに加え,多発例が多く,かつその多発例においては,1例あたりの所有病変個数が多く,深部,下部大腸にまたがって病変を有した症例の占める割合もより高かった.そのため,6mm以上の病変を有した症例のうち深部大腸のみに病変を有した症例は14.3%に過ぎなかった.また腺腫・早期癌症例の55.9%は深部大腸に病変を有したが,そのうちの51.3%は下部大腸にも病変を有していた.従って,sigmoidofiberscopyを行い病変が認められた症例には,後日,全大腸の検査を行うことによって,深部大腸病変有症例も含め,腺腫・早期癌症例の多くは拾い上げ可能と思われた. 2)人間ドックにおいてsigmoidofiberscopyによる大腸癌検診を行い,対象の性,年齢構成等を考慮しても高い発見率が得られた. 3)検査間隔は,無所見者においても,1回の検査のみでは6mm以上の病変の見逃しも少なくないため,当初は2年連続の検査が望ましく,その後は病変の発育速度,発見率を考慮して2年毎の検査でよいと思われた.

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