1989 年 31 巻 6 号 p. 1545-1549_1
広範囲の表層拡大型を呈した,いわゆる食道癌肉腫の若年女性例を報告した. 症例は36歳の女性で,嚥下困難をきたし当科へ紹介された.食道X線および内視鏡検査にて,Im左前壁に口側は表面平滑で肛門側は多結節状の4cm大のくびれを有する隆起性病変を認め,ほかに3カ所の不整な小結節状病変を認めた.さらに門歯より約22cmから食道胃接合部の約1cm口側までの粘膜面は,軽度発赤し粗〓で,この範囲はルゴール染色による不染域と一致した.胸腹部食道全摘出術を施行した.切除標本では術前診断に一致した4.0×1.7×1.3cm大の隆起性病変と,その口側3.5cm,肛門側6.0cmにおよぶ表層拡大進展を認めた.組織学的に隆起の大部分は肉腫様成分,その基部および表層拡大部はすべて高分化型扁平上皮癌からなり,最深部は多結筋状の隆起部で固有筋層までであった.表層拡大型のいわゆる食道癌肉腫で,mpn1(+)M0Pl0,stageIIであった.