抄録
当施設で過去10年間に経験した大腸早期癌52病変と腺腫578病変および大腸進行癌325病変についてその大きさ,形態,発生部位等について検討を行い以下の結果を得た. (1)早期癌は,S状結腸に最も多く認められた.(2)有茎性の早期癌はS状結腸に多く,亜有茎性の早期癌は直腸に多かった.(3)6mm以上の腺腫でも,早期癌の場合と同様に有茎性の病変はS状結腸に最も多かった.(4)進行癌は,直腸に最も多かった. 以上より,早期癌ではS状結腸に有茎性の病変がとくに多いという特徴が認められたが,6mm以上の腺腫でも同様の結果であり,直腸の腺腫,早期癌では,大きさを増しても有茎性の病変になりにくい傾向があり,そのためS状結腸の有茎性病変が目立つ結果になると考えられた.進行癌の検討では直腸に最も多く,早期癌とは異なった分布を示した.直腸とS状結腸では,早期癌の形態に違いが認められ,直腸には亜有茎性の病変が多く,S状結腸には有茎性の病変が多かった.有茎性の早期癌は亜有茎性の早期癌と比較して進行癌に進展するためにより多くの時間を要するため,早期癌は,S状結腸に多いが,進行癌は,直腸に最も多いという結果になると考えられた.