抄録
長期経過した大腸炎に合併する早期癌,dysplasiaの形態的特徴,内視鏡像について検討した.対象は潰瘍性大腸炎2例,腸結核1例,クローン病1例である.1例を除き早期癌またはdysplasiaの単独例で内視鏡で診断し手術を行った.4例の切除標本にみられた早期癌は4個(m癌3,sm癌1)でm癌3個中2個は扁平隆起,1個は平坦に近い浅い陥凹であった.sm癌は広基性隆起であった.dysplasiaは13病変で,平坦8,顆粒状粘膜2,非常に丈の低い扁平隆起3で平坦か平坦に近い病変が多かった.内視鏡的に隆起の早期癌の診断は容易であった.dysplasiaでは平坦だが発赤のある粘膜,顆粒状粘膜は診断できた.この様な微細な病変を明確にするのにvideoscope画像のカラーコレクター処理による色彩強調や色素散布法が有用であった.大腸炎に合併する早期癌の診断で重要なのは丈の低い扁平隆起であり,その周囲粘膜に通常の炎症性粘膜にみられるのとは異なった発赤あるいは顆粒状粘膜変化が認められれば診断は一層確実になる.