日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
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31 巻, 7 号
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  • 安東 正晴
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1727-1741
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    内視鏡は奥行きのある物体を観察するため照明むら(シェーディング,S)が避けられず,有効な画像処理を行うためには,その前段階としてS補正が必須である.そこで実験モデル,肝表面像および消化管像を対象としてS補正を検討した.原画のRGB各成分に平滑化フィルター(サイズ15×15)を.20回かけ画像をぼかし,明るさだけを表現する画像を作製し,基準画像とした.これで元のRGB成分を除算し,ついで色調補正のために,明るさを原画像の適:正露出部分のRGB各成分に近似させたところ色調,形態ともに良好なS補正画像が得られ,その後の各種画像処理(特に2値化処理)においても,カラーにより病変がより正確に抽出できた.S補正の自動化のためには色調補正の段階で明るさの補正を行なう必要があるが,適正露出部の明るさの代わりに,画像全体の明るさの平均値+標準偏差値を代用し,この方法が実用的であることを明らかにした.
  • ―腹壁透過赤外線による基礎的検討―
    永尾 重昭, 宮原 透, 川口 淳, 金沢 雅弘, 渡辺 圭三, 土居 利光, 小林 正彦, 東納 重隆, 木本 賀之, 日野 邦彦, 丹羽 ...
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1742-1751
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    電子スコープの先端に組み込まれたCCDが,赤外線に感受性があることを利用し,体外から赤外線を照射し,腹壁透過赤外線により,胃内を観察する体外照射式赤外線電子スコープを開発し,臨床例に応用し,種々な面から検討を加えた.対象とした症例は,胃潰瘍5例,胃癌2例,胃炎(萎縮性あるいはびらん性)7例,十二指腸潰瘍2例,その他10例である.腹壁を通しての胃内の赤外線観察では,前壁側は,全般的にほぼ満足できる像が得られたが,部位により若干の制限があった.一方,後壁側では,前壁を通しての間接的な照明となり,十分な知見は得られなかったが,ある程度の観察は可能であり,光量を増大する等により,後壁側もこの方法で観察可能となると考えられた.透過赤外線による胃内腔の観察では,胃前壁において粘膜面の細かい性状は描出されず,また,正常例,萎縮性胃炎において,通常光観察では著明に認められる胃粘膜面の表在血管は,全く描出されなかった.しかし,比較的深部に存在すると想定される太い血管像が明瞭に認められ,その分枝状況も詳細に観察可能であった.胃癌例では,癌周堤周辺部でのpooling様所見,胃潰瘍例では,瘢痕中心部に向かう深部血管像,並びにその中心部では血管が認められず,この所見は,瘢痕を表わすものと考えられた.いずれにしても,この方法により胃壁深部情報特に血管像を中心とした所見の把握が可能であると考えられた.今回報告した方法によれば,リアルタイムに可視光による通常観察と赤外線像による観察が可能であり,両者の切り換え,あるいは,両者を併用し,両者の特長を生かして観察することも可能であった.今後,機器の改良に加え,症例を重ね,現在行っている胃内照明方式による赤外線電子スコープによる画像と比較検討することにより諸疾患における通常光では観察できない深部の血管像を中心とした所見把握を,追求し診断面での向上を図りたい.
  • 益満 博, 東 馨, 吉田 貞利, 神長 憲宏, 片倉 重弘, 坪水 義夫, 佐竹 儀治, 藤田 力也
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1752-1759
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    大腸早期癌の発育進展について検討するため,大腸早期癌61病変を病変の大きさにより10mm以下と11mm以上の2群に分け,形状および病変の存在部位,病理組織学的特徴について比較検討した.また,大腸腺腫640病変について大きさ別の部位分布を早期癌と比較した.さらに,大腸進行癌378病変の部位別分布についても早期癌との比較を行った.大腸早期癌のうち10mm以下の病変では,22病変中20病変(91%)が扁平または無茎性の形状であったのに対し,11mm以上では有茎性病変が38病変中17病変(44.7%)を占め,病変の大きさにより肉眼形態に違いがみられた. 病理組織学的には,10mm以下では22病変中12病変(54.5%)が癌組織のみからなり腺腫を伴わないのに対し,11mm以上の病変では39病変中28病変(71.8%)が腺腫を伴っていた. 大腸早期癌と進行癌の部位分布を比較すると,10mm以下の早期癌の分布が進行癌の分布に近く,11mm以上の病変の分布は11mm以上の腺腫の分布により相関していた.以上の結果から,大腸早期癌には小さい病変の段階で癌化し,急速に進展する早期癌化型と,比較的大きな腺腫の一部に発生し,ゆっくりと進展する腺腫先行型があると考えられた.川崎市がん検診センター
  • ―重症例を中心に―
    渥美 正英, 伊勢谷 和史, 胡井 智, 小笠原 宏行, 小原 尚之, 高祖 均, 高顕 純平, 赤木 博, 岡野 均, 布施 好信, 児玉 ...
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1760-1769
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    90例のMallory-Weiss症候群について臨床的検討を行った.誘因としてはアルコールが40.0%,内視鏡検査施行中が13.3%であった.裂創は食道一胃接合部直下の噴門部胃粘膜の小彎側に多く,裂創の数では1条が72.2%を占め,最高4条であった.治癒までの期間は線状形裂創で平均9.1日,紡錘形裂創で平均18.7日であり,大部分が3週間以内に治癒した.また輸血ないしは内視鏡的止血術を必要とした症例を重症例とし,この定義にあてはまる6例について検討したところ,食道一胃接合部から噴門部の小彎側を中心に紡錘形裂創が多発している例が多く,露出血管を有する4例に内視鏡的止血術を施行した.このうち3例に永続止血が得られたが,初診時には止血状態の線状裂創でも経過中に大量の再出血をきたし,純エタノール局注にても止血しえず手術に至った症例もあり,急性期には注意深い経過観察が必要と思われた.
  • 角谷 宏, 六川 博子, 野中 由紀子, 堀部 俊哉, 大久保 公雄, 河合 隆, 中川 雅夫, 新戸 禎哲, 斉藤 有一, 大坪 哲雄, ...
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1770-1775_1
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    組織接着剤Cyanoacrylete(以下CA)の基礎的検討並びに臨床応用を試み,以下の知見を得た.1)CA及び造影剤加5%Etanolamine Oleate(以下EO)を家兎耳介静脈に注入し経時的に血流量並びに組織学的変化を観察した.EOでは血栓形成や血管内皮細胞の脱落を認め炎症性変化がび慢性に認められるのに対し,CAを注入した場合は強い炎症性変化が血管壁周囲に限局して認められた.また,血流量の多い家兎門脈にCAを注入した場合,瞬時に重合凝固し血管壁と接着,移動性は全く認められなかった.2)CAの重合時間を測定した結果血液内では20秒であり,EO内では200秒であった.3)雑種成犬の食道,胃粘膜下にCAを注入し組織学的変化を観察したところ家兎耳介静脈内注入と同様に限局的な変化を示した.4)臨床で食道静脈瘤に対しCAを使用し一時的に確実な止血が得られたが単独使用のみで静脈瘤の消失は得られずEOとの併用が重要であると思われた.
  • 芦田 潔, 大坂 直文, 鄭 鳳鉉, 滝内 比呂也, 阪口 正博, 田中 雅也, 奥村 泰啓, 浅田 修二, 平田 一郎, 大柴 三郎
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1776-1782_1
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    著者らは,活動期の胃潰瘍患者6例にOmeprazole(20mg/日,朝食後)を投与し2週間毎に内視鏡観察を行ったところ4例に潰瘍底の隆起がみられた.隆起の発現頻度は,H2 blocker投与時よりも著しく高率であった.24時間胃内pH連続測定による検討によると,Omeprazole投与中にはRanitidine投与中よりもpH3以上のholding timeがはるかに長く,また平均pHも高かった.つまり,OmeprazoleではH2 blockerよりも胃内pHの持続的な上昇がみられた.隆起には,表面性状が白色調のものと粘膜模様を有するものの2種類があった.胃生検の結果,前者は好中球,小円形細胞浸潤が著明な肉芽組織であり,後者は一層の再生上皮に被覆された肉芽組織であった.すなわち,両者とも肉芽組織が隆起の原因であり,後者は前者より組織の修復過程が進んだ段階であると考えられた.Omeprazole投与時の潰瘍底隆起の成因も肉芽組織の増生であり,H2 blockerよりも胃液の消化作用の阻止が完全であるために隆起の発現が高率であったものと考えられた.
  • ―特に前庭部急性対称性潰瘍について―
    西元寺 克禮, 一原 亮, 陶山 紳一郎, 岡部 治弥, 為近 義夫
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1783-1793
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    1971年より1987年12月までに北里大学病院で経験した急性胃粘膜病変(AGML)の231例の臨床的・内視鏡的分析を行った.231例のうち多発潰瘍を主とする急性潰瘍が130例,ulcero-erosionを含む急性びらん性胃炎が101例であった.AGMLの誘因では薬剤(87例),精神的ストレス(57例)が最も多く,原因不明のものは51例であった.主訴は大部分の症例が出血と心窩部痛で発症しており,誘因別に病変発生部位を検討すると,抗炎症鎮痛剤では胃体上部と前庭部が均等であるのに対し,精神的ストレス,原因不明のものは前庭部に多かった.典型的幽門前庭部急性対称性潰瘍は36例で,薬剤によるものと精神的ストレスならびに不明群とは異なる原因で発症することが推測された.また前庭部慢性消化性潰瘍とは治癒,再発等経過が異なっており,急性対称性潰瘍が慢性化する頻度は低いことが推測された.
  • 小野 直美, 福田 亮, 島田 宜浩
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1794-1803
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    HBVキャリアのnatural courseにおけるHBe抗原抗体系のseroconversionによる肝の変化を形態学的に明らかにする目的で,臨床的に無症状のままHBe抗体を獲得し,さらに組織学的にも肝炎所見をもたないHBe抗体陽性キャリア22例の肝表面像を腹腔鏡的に観察し,無症候性HBe抗原陽性者14例のそれと比較検討した.その結果,肝と周辺臓器との癒着,肝表面の陥凹,および白色紋理の3所見が,HBe抗体陽性群において.HBe抗原陽性群よりも,有意に高率に出現していた.このことは,臨床的に無症状であったHBe抗体陽性者においても,seroconversion時に肝炎が存在したことを形態学的に裏付けたものと考えられる. また,5症例での,肝内HBVDNAの検討により,HBe抗体陽性者3例の全例に組み込み体を認め,これはHBV感染既往のsignと考えられた.
  • 長谷川 かをり, 長廻 紘, 飯塚 文瑛, 屋代 庫人, 佐藤 秀一, 横山 聡, 五十嵐 達紀, 秋本 伸
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1804-1811
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    長期経過した大腸炎に合併する早期癌,dysplasiaの形態的特徴,内視鏡像について検討した.対象は潰瘍性大腸炎2例,腸結核1例,クローン病1例である.1例を除き早期癌またはdysplasiaの単独例で内視鏡で診断し手術を行った.4例の切除標本にみられた早期癌は4個(m癌3,sm癌1)でm癌3個中2個は扁平隆起,1個は平坦に近い浅い陥凹であった.sm癌は広基性隆起であった.dysplasiaは13病変で,平坦8,顆粒状粘膜2,非常に丈の低い扁平隆起3で平坦か平坦に近い病変が多かった.内視鏡的に隆起の早期癌の診断は容易であった.dysplasiaでは平坦だが発赤のある粘膜,顆粒状粘膜は診断できた.この様な微細な病変を明確にするのにvideoscope画像のカラーコレクター処理による色彩強調や色素散布法が有用であった.大腸炎に合併する早期癌の診断で重要なのは丈の低い扁平隆起であり,その周囲粘膜に通常の炎症性粘膜にみられるのとは異なった発赤あるいは顆粒状粘膜変化が認められれば診断は一層確実になる.
  • 管野 隆治, 佐竹 儀治, 池田 政文, 坪水 義夫, 片倉 重弘, 藤田 力也, 菅田 文夫
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1813-1819
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    当施設で過去10年間に経験した大腸早期癌52病変と腺腫578病変および大腸進行癌325病変についてその大きさ,形態,発生部位等について検討を行い以下の結果を得た. (1)早期癌は,S状結腸に最も多く認められた.(2)有茎性の早期癌はS状結腸に多く,亜有茎性の早期癌は直腸に多かった.(3)6mm以上の腺腫でも,早期癌の場合と同様に有茎性の病変はS状結腸に最も多かった.(4)進行癌は,直腸に最も多かった. 以上より,早期癌ではS状結腸に有茎性の病変がとくに多いという特徴が認められたが,6mm以上の腺腫でも同様の結果であり,直腸の腺腫,早期癌では,大きさを増しても有茎性の病変になりにくい傾向があり,そのためS状結腸の有茎性病変が目立つ結果になると考えられた.進行癌の検討では直腸に最も多く,早期癌とは異なった分布を示した.直腸とS状結腸では,早期癌の形態に違いが認められ,直腸には亜有茎性の病変が多く,S状結腸には有茎性の病変が多かった.有茎性の早期癌は亜有茎性の早期癌と比較して進行癌に進展するためにより多くの時間を要するため,早期癌は,S状結腸に多いが,進行癌は,直腸に最も多いという結果になると考えられた.
  • 杉森 清孝, 白木 正裕, 室谷 益代, 松本 和基, 津本 清次, 大柴 三郎
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1820-1823_1
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は45歳女性.ビタミンC錠(アスコルビン酸)を就寝前に飲水せずに服用した.翌朝,嚥下時に咽頭部異和感が出現し来院した.内視鏡検査で食道入口部直下より25cmまでの間に全周性びまん性に白苔の付着を認めた.生検では扁平上皮は変性し,細胞間浮腫を思わせる細胞間隙が目立ち,変性の高度な部位では微小膿瘍も散見された.粘膜保護剤服用にて,第3病日に自覚症状は消失し,第10病日の内視鏡検査では病変は消失していた. 本例で服用されたビタミンC錠は海外の市販薬で,大きさ19.3×8.1×7.6mm,pH2.42,アスコルビン酸含量995.6mgであった.これを本邦の市販薬(ハイシーS(R)錠)と比較すると,大きさは約2倍でアスコルビン酸含量は約20倍にも達し,食道炎惹起の大きな原因と考えられた. ビタミンC錠による薬剤性食道炎は,極めて稀な疾患であり,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 渡部 博之, 島 仁, 長沼 敏雄, 荒川 弘道, 正宗 研, 斉藤 昌宏, 上坂 佳敬, 佐藤 誠
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1824-1830_1
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    本邦では稀なMultiple lymphomatous polyposis(以下MLP)の1例を経験したので報告する.症例は57歳女性.昭和58年12月,近医でRLHの診断を受けた.昭和62年1月ごろから体重減少が出現したため同年4月13日秋田大学第1内科に入院した.入院時身体所見では,後頸部に孤立性のリンパ節腫大を認めた.胃十二指腸球部の粘膜襞は肥厚し,十二指腸下行脚から横行結腸に,白色調,小~扁平類円形のポリープ状病変が多発していた.その他,空回腸には口唇様の腫瘤が点在していた.病変部からの生検所見は,いずれもB-cell typeの悪性リンパ腫で,Diffuse medium sized cell type(LSG),Diffuse small cleaved cell type(WF)であった.以上の結果からMLPと診断した.VEPAを中心とした化学療法により,体重は増加し,回腸末端部以外の病変はほぼ消失した.本邦で報告されたMLP18例について文献的考察を加えた.
  • ―高ガストリン血症の1例を含む―
    菅井 有, 高山 和夫, 狩野 敦, 藤巻 英二, 鎌田 広基, 安宅 龍一郎, 斉藤 裕, 折居 正之, 佐藤 俊一, 冨地 信和, 千葉 ...
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1833-1841_1
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例1は47歳女性で心窩部痛を主訴に受診した。血清ガストリン値が高値の他は異常所見はなかった.上部消化管造影及び内視鏡検査で十二指腸球部に半球状の隆起性病変を認めたため,strip biopsy手技にて,生検し,カルチノイドを認めたため腫瘤核出術を施行した.摘出標本で,粘膜下層に限局する4×7×7mm大の腫瘍を認めた.ガストリンは腫瘍内に証明されなかった.症例2は73歳女性で,上部消化管造影及び内視鏡検査で十二指腸球部に亜有茎性のポリープを認めたためポリペクトミーを施行した.十二指腸粘膜固有層に限局するカルチノイドであった.十二指腸カルチノイドは自験例も含めて145例の報告例があるが,術前診断されたのは24例のみであった.また高ガストリン血症を伴っている例はわずかに6例で,自験例ではこれに加え,生検標本で胃体部の萎縮性変化から,A型慢性胃炎との関連も示唆された.ポリペクトミーの適応についても考察を加えた.
  • 古要 俊也, 松村 昭彦, 松田 春甫, 沼野 藤江, 神坂 和明, 前沢 秀憲, 下重 勝雄, 中村 宏, 五関 謹秀
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1842-1849
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の女性.昭和63年4月頃より労作時の息切れが出現.6月22日著明な貧血を指摘されて入院.入院時検査でHb4.8g/dl,便はタール状で潜血反応強陽性であった.上部消化管X線検査及び内視鏡検査では,十二指腸下行脚近位部外側壁に,中心に潰瘍を伴う直径約3cmの粘膜下腫瘍を認めた.第30病日膵頭十二指腸切除術を施行,組織学的にはAntoni A型の部分とB型の部分が混在する神経鞘腫で,酵素抗体法ではS-100蛋白が染色された.核分裂像も多く十二指腸壁に浸潤性に発育していることより悪性度の高い腫瘍と考えられた.十二指腸に発生する神経鞘腫は極めて稀な疾患で,本邦での報告も1987年までで疑診例を含めて15例にすぎず,若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 志喜屋 孝伸, 照喜名 重順, 東恩納 厚, 新垣 民樹, 嘉手納 啓三, 重野 芳輝, 金城 福則, 斎藤 厚
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1851-1854_1
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性で,肺癌に対する放射線治療後,当科外来にて経過観察していたが,昭和62年9月から腹痛が続くため注腸造影,大腸内視鏡検査を施行した.その結果,直腸から下行結腸にかけて,紅暈を伴うびらんが散在していた.同時に吸引採取した糞便からBlastocystis hominisが検出された. 本原虫の大腸内視鏡検査に関する報告は欧米にはみられるが,本邦では初めてと思われるので報告した.
  • 中西 徹, 坂田 泰昭
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1855-1860_1
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    通常の検査で原因不明の消化管出血の中で血管奇形(arteriovenous malfomation,angiodysplasia)の報告はまれであり,本邦で大腸例79例である.しかしその成因は加齢と関係し今後高齢者の下部消化管出血の原因として増加してくる事が推測される.
    今回われわれはリウマチ性心弁膜症を合併する60歳の女性で,消化管出血をくりかえしているが,通常の検査法では出血源不明であった.今回血管造影次いで大腸内視鏡検査で下行結腸のAngiodysplasiaと診断し得た1例を経験したので報告する.
    血管造影では下腸間膜動脈造影で下行結腸部にvasucular ectasiaを2カ所確認し,内視鏡で同部位の下行結腸に1カ所にvarix様の軽度の隆起と1カ所のteleangiectasiaを認めた.
    これらの血管奇形は加齢や心臓病が関与する後天性の変性疾患と推測されており,今後高齢者において通常の検査では原因不明の消化管出血の原因として考慮する必要があると考えられた.
  • 加藤 元嗣, 斎藤 雅雄, 目黒 高志, 板坂 裕子, 木村 宗士, 林下 尚之, 佐賀 啓良, 三谷 沙貴子, 西川 秀司, 吉田 純一, ...
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1861-1867
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    非AIDSで大腸病変を合併したKaposi肉腫の1例を経験した.症例は68歳男性で,昭和60年春頃より右第1趾の紫色の皮疹が出現し,徐々に数を増やして両手・両足に拡がり疼痛を認めるようになった.昭和61年7月に皮膚の組織学的検索にてKaposi肉腫と診断され,HTLV III抗体陰性なことより非AIDSのKaposi肉腫として治療した.昭和62年5月に腹痛と便潜血陽性化のため,大腸の内視鏡学的検査を施行した.直腸から横行結腸にかけて直径約5~10mmの赤色調を呈した粘膜下腫瘍を示す隆起性病変が散在しており,一部に中心性潰瘍の形成が認められ,生検で皮膚病変と同様な組織像を得たため,Kaposi肉腫の大腸病変と診断した.Kaposi肉腫は消化管病変を合併することが多く,積極的な消化管検査が重要であると考えられた.
  • 山崎 和文, 牧山 和也, 村田 育夫, 水田 陽平, 岩永 整磨, 中田 雅也, 梅根 良彦, 山下 豊, 西山 高志, 大曲 勝久, 今 ...
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1868-1872_1
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,比較的稀であるとされる下行結腸の平滑筋腫を経験した.患者は68歳男性で,人間ドックにて偶然大腸の山田III型ポリープを指摘された.完全生検の目的にて内視鏡的ポリペクトミーを行い7×6×4mmの腫瘤を摘出した.組織像は正常大腸粘膜に被われて,核異型や分裂像を呈さない紡錘型の平滑筋細胞が束状に配列した平滑筋腫と診断された.大腸の平滑筋腫は少なく,特に結腸には稀である.現在までの本邦における報告は約150例であり,そのうちポリペクトミーを行った症例は自験例も含め18例であった.管内型発育を示す小さい平滑筋腫症例に内視鏡的ポリペクトミーは有用であると思われた.
  • 吉利 彰洋, 草野 佐, 小沢 俊総, 田辺 誠, 小俣 好作
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1873-1878_1
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    1980年から1988年の9年間に大腸癌切除163例を施行し2例(1.2%)の悪性絨毛腫瘍を経験した.症例1は横行結腸に発生したvillous cancerであった.症例2は上行結腸のcancer in villous adenomaであり,その盲腸側には限局潰瘍型腺癌,S状結腸にはIIa型の癌という3癌の同時多発例であった。絨毛腫瘍は肛門より25cm以内の直腸S状結腸に好発し,このように口側結腸に発生する例は比較的まれである.また両者の病理組織像に明らかな差異があり絨毛腫瘍の悪性化に関し,発生当初から深部発育の緩徐な低異型度の悪性腫瘍とする考えと腺腫の一亜型ないし特殊型の癌化という2通りの病態に関し興味深かったので,文献的考察を加えこの2例を報告した.
  • 屋代 庫人, 横山 聡, 佐藤 秀一, 飯塚 文瑛, 太田代 安律, 北畠 滋郎, 長廻 紘, 鈴木 茂, 美山 晃, 石橋 静
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1879-1885
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    朋栄社製高解像静止画像カメラHMC-1000およびオリンパス社製直腸鏡(硬性鏡)を用いてハイビジョン方式(HDTV方式)によるデジタル静止画像を撮影した.テレビジョン学会高精細度解像度チャートを利用した解像度の評価では2000テレビ本の最高レベルの解像度であった.人体の直腸粘膜のハイビジョン静止画像の撮影を行い,良好な粘膜の色調及び血管像が得られた.現在の内視鏡テレビ画像の向上にはNTSC方式からハイビジョン方式への変更と内視鏡の光学系のハイビジョン方式に適合した改良が必要と考えられた.また,この静止画像の取り込みには3メガバイトと大きなメモリーが必要とされるため,光磁気ディスクのような大容量で小型のメモリーが是非とも必要とされる.
  • 林 伸行, 小森 保生, 林 隆一, 山口 丈夫, 近藤 重弘, 遠藤 茂夫, 森瀬 公友, 稲垣 貴史, 木村 昌之, 嶋田 満
    1989 年 31 巻 7 号 p. 1886-1891_1
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    昭和58年1月より昭和62年12月までの期間に純エタノール局注止血法が施行された胃潰瘍127例を対象に,純エタノール局注止血法の合併症について検討した.純エタノール局注と関連があると考えられた合併症として,潰瘍の著明な拡大8例,胃粘膜の広範な変色2例,重複幽門形成1,例の計11例を経験した.局注後潰瘍の長径が3倍以上に拡大した8例のうち,胃体部潰瘍7例では元の潰瘍を起点に口側または肛側に長軸方向に拡大し,胃角部潰瘍1例では横軸方向に拡大した.胃粘膜の変色をきたした2例では胃体上部小彎,幽門前部小彎の潰瘍に局注した直後,それぞれ胃体部後壁,前庭部小彎の粘膜が暗青色に変色した.重複幽門形成例は幽門前部小彎の胃潰瘍例で,局注後に潰瘍が深化,2カ月後の内視鏡検査で重複幽門が発見された.合併症を予防するためには,あまり深く局注しないこと,局注量を少なくすることが必要と考えられた.
  • 1989 年 31 巻 7 号 p. 1892-2036
    発行日: 1989/07/20
    公開日: 2011/05/09
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