日本消化器内視鏡学会雑誌
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胃内直接照射方式による赤外線電子スコープの基礎的検討
永尾 重昭宮原 透川口 淳金沢 雅弘土居 利光渡辺 圭三小林 正彦足立 洋祐東納 重隆木本 賀之日野 邦彦丹羽 寛文
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1989 年 31 巻 8 号 p. 2060-2071

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抄録
赤外線を体外から照射し,腹壁を透過した赤外線で,胃内を観察する体外照射方式の赤外線電子スコープについては,既報の如く基礎的検討を終え,これにより粘膜深部の情報が得られること先に明らかにした.今回,著者らは,さらに胃内を直接赤外線照射する方式の赤外線電子スコープを開発し,臨床例に応用し,赤外線の臨床面における効果について,特に血管像を中心に検討を加えてみた.対象とした症例は,総計134例で,そのうちわけは,早期胃癌3例,進行胃癌8例,胃潰瘍46例(活動期12例,治癒期14例,瘢痕期20例),胃ポリープ11例,胃粘膜下腫瘍3例,胃炎(萎縮性,あるいはびらん性)22例,正常例29例,十二指腸潰瘍等その他12例である.赤外線胃内直接照射方式による赤外線電子スコープでは,胃内全域の観察が可能で,観察部位の盲点は,体外照射方式に比べて全くなく,かつ観察対象が,遠距離となっても光量調節により赤外観察が可能であった.この方式による赤外線観察でも,体壁,胃壁を透しての体外照射方式における赤外線像と同様に,萎縮性胃炎で見られる通常光観察での判定基準の一つとされる胃粘膜表面における微細血管像は,全く描出されなかった.しかし,深部のものと想定される血管像は,十分得られ,その走向状況,分枝状況を明らかにすることができた.この所見は,通常光観察における正常例でも同様であった.胃潰瘍活動期では,通常光で見られる白苔は淡い黒色調に表わされ,急性期潰瘍の周辺部では血管像は認められず,瘢痕では,それに向かって集中傾向を示す深部血管像は認められたものの,瘢痕中心部では血管像は全く認められず,瘢痕の深さ,ひいては再発の予測などの判定の一助となることが想定された.胃ポリープ並びに胃粘膜下腫瘍では,表面構造並びに血管像は全く得られなかった.胃癌では癌周堤外側で血管の途絶が認められ,周堤では血管像は認められなかった.また,周堤周辺で血管の拡張,さらに,IIc面でのpooling様の所見等が認められた.今後さらに症例を重ね,特に各種疾患における粘膜下血管像並びにその他の所見について,赤外線像の特長を明らかにすべく検討を加えて行きたい.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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