日本消化器内視鏡学会雑誌
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慢性関節リウマチ患者における消化性潰瘍の検討―薬剤起因性潰瘍,通常の消化性潰瘍との比較―
原 和人古田 和雄大野 健次宮岸 清司山本 和利清光 義則中崎 聡村山 隆司
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1989 年 31 巻 8 号 p. 2089-2097_1

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抄録
慢性関節リウマチ(以下RA)患者に消化性潰瘍が発生しやすいことがよく知られている.今回,RAに伴った消化性潰瘍の特徴とその成因を明らかにする目的で,RAに伴った消化性潰瘍81例(以下RA群)について,非ステロイド系消炎鎮痛剤による消化性潰瘍23例(以下NSAID群)と通常の消化性潰瘍155例(以下通常群)との比較検討をおこなった. 通常群に比して,RA群とNSAID群には,高齢者と女性が有意に多く,その潰瘍は,胃潰瘍とりわけ胃前庭部潰瘍が有意に多かった.また,RA群は通常群に比較して,多発潰瘍が有意に多かった.RA群の潰瘍は,大きい潰瘍が多く,そのために,出血を伴い易く,NSAID群は,小さい潰瘍が多く,出血性潰瘍も少ない傾向があった.RA群では,潰瘍の形態が不整型を呈するものは,すべて胃前庭部に存在した. RA群の潰瘍は,NSAID群,通常群と比較して,治癒が遷延したが,H2-受容体拮抗剤の投与により,治癒が得られた. 以上の結果より,RAに伴った消化性潰瘍の成因として,大量かつ長期に投与されているRA治療薬剤が最も影響しており,RAの潰瘍の形態的特徴と治癒の遷延は,RAの病態の関与が考えられた.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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