抄録
食道表在癌40例の隆起陥凹因子を,内視鏡,切除肉眼,組織の各所見で比較し,20例においては組織計測も行い,以下の結果を得た.なお,隆起陥凹については,一見して明瞭な隆起陥凹病変(C)と不明瞭なものとに分け,不明瞭な病変では,詳細にみて軽度の隆起陥凹を認識できるもの(B)と出来ないもの(A)とに分けた.(1)隆起陥凹とその程度について3所見のすべてが一致したのは74%であった.(2)組織切片上の最大隆起陥凹実測値は内視鏡でのA群0.2±0.1mm,B群0.7±0.9mm,C群1.6±0.9mmであったが,健常部粘膜表面から固有筋層上縁までの厚さを100としたindexでは,A群6.0±7.2,B群27.9±38.6,C群127.5±55.1と,隆起陥凹の印象が内視鏡所見とより良く一致していた.(3)A群ではep癌が,C群ではsm癌がほとんどであったが,B群にはepからsmまでのものが含まれていた.しかし,リンパ節転移,脈管内侵襲からみてA,B両群とC群とでは明らかな差があり,隆起陥凹を基準とした分類は,よく表在癌の臨床的性格をも表していた.