抄録
電子スコープ(TV-Endoscope)にて胃びらんの治癒過程を観察し,凝血あるいは白苔の付着,びらん周囲の浮腫およびびらん面の発赤の有無により,5ステージ(A,H,R1,R2,R3)に分類すると共に,びらんの治癒形式について検討した.幽門腺領域と胃底腺領域では,びらんの中の各stageの占める比率に有意差が認められ,幽門腺領域のびらんではH stageが多く,胃底腺領域のびらんではHstageに比してAstageが多く認められた.両領域ともR1およびR2stageはほぼ同様の比率を示したが,R3stageは胃底腺領域のものに多く認められた.びらんの治癒過程において生じる再生上皮には,(1)びらん底部に早期に胃小窩,胃小溝構造を認め,周囲粘膜と類似したパターンを呈するもの,(2)胃潰瘍の治癒過程と同様にびらん辺縁に配列した紡錘状あるいは棚状を呈するものの2種類のパターンが認められた.これらはびらんの深さによる再生機転の差によると推定され,それぞれ村上分類のU1-0およびIに相当すると思われる.紡錘状あるいは柵状再生上皮を有するびらんは,幽門腺領域,胃底腺領域とも,主としてHないしR1 stageにみられ,各ステージのびらんの中に占める頻度は10~25%であった.