日本消化器内視鏡学会雑誌
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生検組織よりTreponema pallidumが証明された胃梅毒の1例
帆北 修一榎本 稔美高尾 尊身金子 洋一愛甲 孝島津 久明松下 文雄田中 貞夫柏崎 一男
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1989 年 31 巻 9 号 p. 2446-2453

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抄録

胃梅毒の1例を報告し,若干の文献的考察を加えた.症例は21歳女性.1987年8月,心窩部痛と嘔吐を主訴として来院した.胃X線・胃内視鏡検査で胃角部および幽門前庭部の多発性潰瘍と診断し,外来で抗潰瘍剤の投与を行ったが,症状および内視鏡所見の改善傾向が認められなかったため入院治療を行うことにした.入院時内視鏡所見では,胃角から幽門前庭部に不整形の多発潰瘍をともなう白苔・びらん・出血などの多彩な所見がみられ,胃悪性リンパ腫の疑診のもとに生検を施行したが,悪性所見は認められなかった.血清梅毒反応が強陽性と判明したため,胃梅毒を疑い駆梅療法を開始した.治療開始3カ月後には内視鏡所見は著明に改善し,血清梅毒反応も低値となった.駆梅療法前の生検組織標本の特殊染色(Warthin-Starry法)によりTreponema pallidumが証明され,胃梅毒の確診が得られた.抗潰瘍療法に抵抗し,難治性病変を持続する症例には,本疾患の可能性も考慮に入れ,血清梅毒反応や生検組織標本の特殊染色を行うことが重要である.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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