1989 年 31 巻 9 号 p. 2511-2516_1
症例は82歳,女性.主症状は血便であった.入院後施行した大腸内視鏡検査にて,上行結腸に発赤した低隆起性病変を認めた.生検を行ったところ,噴出性の出血を認め,血管性病変が疑われた.腹部血管造影において,(1)回結腸動脈上行枝の拡張像,(2)末梢血管の屈曲・蛇行および集簇像,(3)静脈の早期還流像を認め,大腸動静脈奇形と診断され手術を施行した.切除標本のmicroangiogramでも,術前の血管造影と一致した所見が得られた. 大腸動静脈奇形は比較的稀れな疾患で,本邦での報告例は26例にすぎない.本症は,右半結腸にみられることが多く,血便を認めた患者において,右半結腸に発赤した低隆起性病変を認めた場合は,本症を念頭におく必要がある.