抄録
われわれは,特異な形態を呈した食道mucosal bridge(以下食道MB)の1例を経験したので報告する.症例は,77歳男性.貧血精査のために上部消化管造影検査を施行したところMB様の病変が中部食道に認められた.それは,食道内視鏡検査によって上門歯から約25cmの中部食道に存在する食道MBと診断された.また,組織学的検索によるとそれは正常の扁平上皮に覆われていることが示唆された. その形状は,直視内視鏡では瘻孔をともなった片側性食道狭窄様を呈し,側視内視鏡では幅広い帯状(約15mm)を呈していた.そして食道X線および内視鏡検査では.MBは気管分岐部の中部食道に存在し,それ自体が収縮するが如くにその形状は変化し,さらにMBとその周辺の背景粘膜は内視鏡的には正常の食道粘膜であった.これらの所見が現在までの後天性食道MBの報告の形態的特徴とは大きく異なっていたことから本例が先天性食道MBである可能性が考えられた. 著者らが集計し得た食道MBの本邦報告例は自験例を含めわずか38例に過ぎず,これら本邦報告例を分析し,検討を加え報告する.