日本消化器内視鏡学会雑誌
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原発性胆汁性肝硬変の腹腔鏡所見に関する検討―特に肝表面像の非定型例について―
畑 耕治郎渡辺 俊明高橋 達朴 鐘千滝沢 英昭山田 慎二鶴谷 孝阿部 毅彦斎藤 貴史秋谷 正彦上村 朝輝朝倉 均
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1990 年 32 巻 3 号 p. 502-511

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抄録
 PBC66症例を対象に,肝表面の定型例と非定型例について,腹腔鏡所見と組織所見を対比検討した.PBCに特徴的な所見である赤色パッチあるいは起伏性変化は症例の約78%に認められ,特に起伏性変化は病期の進展に伴い顕著となり,かつ区域化傾向を示した.一方,赤色パッチや起伏性変化を示す肝表面にさらにそれ以外の所見が加味されている症例と,赤色パッチおよび起伏性変化を欠く症例とを肝表面の非定型例と規定し,その病態の検討を行った.その結果,肝表面にびまん性の赤色紋理を伴う例では,組織学的に慢性肝炎(活動性)類似のpiecemeal necrosisや実質内細胞浸潤が顕著であった.また抗ミトコンドリア抗体亜分画のanti-M4が陽性であるCAH-PBC mixed typeでは,門脈域のみならず実質の炎症壊死所見が強く,肝表面の不整な粗大凹凸と出血斑様の赤色紋理と対応するものと考えられた.一方,I 期病変例の中で,ほぼ正常肝に近い形状を呈する平滑肝例では,赤色パッチや起伏性変化を呈する例に比して組織学的にCNSDCの出現頻度は低く,これはPBCのごく初期の病変を反映しているものと考えられた.また,I 期病変例においても,肝腫大を呈し起伏性変化を伴わない平滑な肝表面に肉芽腫と考えられる白色小結節が認められた例では,組織学的にはCNSDCや明瞭な肉芽腫の出現頻度が高かった.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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