日本消化器内視鏡学会雑誌
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直腸癌における経直腸的超音波断層法の応用
宮路 憲一渋江 正田中 啓三松元 淳鮫島 由規則有馬 暉勝
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1990 年 32 巻 5 号 p. 1140-1146_1

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抄録
 直腸疾患の診断や局在部位の判定には,注腸X線検査や大腸内視鏡検査が行われているが,これらの検査法では腸管壁の層構造の変化や腸管周辺の病態の把握に対しては不十分であり,大腸疾患の診断に対しても超音波断層検査の必要性に対する認識が高まってきている.今回,われわれは直腸腫瘍に対して大腸内視鏡検査法と経直腸的超音波断層検査法(IUS)の併用を試み,次の結果を得た.対象は,1986年11月より1989年6月までに切除標本にて病理組織学的に検索された悪性腫瘍35例(男性19例,女性16例)である. 1.直腸癌の壁深達度診断について 壁深達度の正診率は粘膜内あるいは粘膜下層までと診断したのは9例中7例(77.8%),筋層までは8例中4例(50.0%),漿膜層に達しているが他臓器への浸潤はないと診断した例は15例中12例(80.0%)であり全体として35例中23例(65.7%)の正診率であった.正診できなかったのは12例で,過小診断5例(15.6%),過診断7例(26.9%)であった. 2.直腸周囲リンパ節腫張について 直腸周囲リンパ節腫張の有無について手術所見と対比すると,正診率は腫張ありと診断した21例中11例(52.4%),腫張なしとした14例中10例(71.4%),全体で21例(60.0%)の正診率であった.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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