日本消化器内視鏡学会雑誌
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巨大皺壁型胃病変を呈したAdult T Cell Leukemiaの1例
吉川 和彦前田 清寺尾 征史永井 裕司白 英三曽和 融生梅山 馨任 太性
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1990 年 32 巻 5 号 p. 1147-1152_1

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抄録
 成人T細胞白血病(以下ATLと略す)にスキルス様巨大皺壁型胃病変を伴った1例を経験したので報告する.症例は52歳の男性.大阪市出身,母親は和歌山市出身で主訴は食欲不振.既往歴では19歳時虫垂炎にて手術を受けた.家族歴では特記すべきものなし.入院時現症では眼瞼結膜には軽度貧血と,球結膜に軽度黄染がみられた.臨床検査成績では赤血球数287×104/mm3,血小板数4.1×104/mm3で貧血と血小板減少がみられたほか,肝機能障害がみられた.血清電解質ではCaは11.1mg/dlと高値であった.上部消化管造影所見,および胃内視鏡所見では胃噴門部から胃体部にかけ,特に大轡側を中心に織壁の著明な肥大がみられ,BorrmannIV型の胃癌が考えられた.しかし,内視鏡施行時の胃粘膜生検病理所見では異形リンパ球の著明な粘膜下浸潤がみられ,Maligmant Lymphomaの像であった.また,Anti-human T cell leukemia virus-1(HTLV-1)抗体が陽性であった.末梢血液像では核に切れ込み,分葉傾向のあるATL特有の異常リンパ球も出現がみられた.以上より,ATLと診断したが,ATL腫瘍細胞の胃におけるスキルス様浸潤はきわめて稀であり,興味ある症例と思われた.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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