日本消化器内視鏡学会雑誌
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非腫瘍性狭窄病変による閉塞性大腸炎の1手術例
重康 敏明横山 善文伊藤 誠武内 俊彦広瀬 昭憲山上 祥司金森 俊成大野 恒夫永原 鉱二
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1990 年 32 巻 5 号 p. 1187-1193_1

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抄録
 下行結腸の非腫瘍性狭窄が原因で引き起こされた閉塞性大腸炎の1例を報告した.症例は80歳の男性で,約2年前に激烈な左下腹部痛をきたしてから便秘,腹部膨満感が増強し数日前から腹痛と嘔吐を伴うようになったため入院した.腹部単純写真,注腸,大腸内視鏡で中部下行結腸に全周性の狭窄がみられ,その口側腸管は著しい拡張を示した.上部下行結腸では長軸方向に約7cm,横軸方向へ腸管の約半周におよぶ粘膜面が敷石状に凹凸不整を呈し,この部の外側縁は不整で伸展不良を示した.また,腸管の後腹膜部の対側,すなわち血管入口部の対側を中心に敷石状粘膜のほぼ半分の面積を占める大きな潰瘍と,その後壁側に小さい潰瘍が認められた.保存的療法で敷石状粘膜,潰瘍の改善が認められたが症状が持続するため入院第42日目に大腸左半結腸切除術を施行した.潰瘍はUl-IIIで,潰瘍を含む病変部は閉塞性大腸炎の組織学的所見に一致した.下行結腸の狭窄の原因は明らかではないが,高齢者のうえ2年前に激烈な左下腹部痛があり,それ以来腹部症状の悪化がみられたことより虚血性腸炎が狭窄を惹起した可能性が推測された.閉塞性大腸炎の原因のほとんどが大腸癌で,本例のごとく良性狭窄が原因で発症した例は極めて稀である.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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