日本消化器内視鏡学会雑誌
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胃生検組織中にTreponema pallidumを証明しえた胃梅毒の1例
森 由美子奥野 資夫松林 祐司小寺 徹伊藤 彰子橋本 晃立田 浩伊藤 恭子塚田 英昭上田 俊二酒井 正彦内野 治人垣田 時雄大仲 正志高野 邦子小川 勝彦
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1990 年 32 巻 6 号 p. 1399-1407

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抄録

 46歳男性,食欲不振,体重減少にて受診し,上部消化管内視鏡検査にて,胃前庭部に出血を伴った浅い地図状ないし網目状の不整形な多発性びらんを認め,びらん間の粘膜は浮腫状で発赤し大小不同の粗大顆粒状変化を呈していた.急性胃粘膜病変(AGML)としてH2プロッカーを含む抗潰瘍薬の投与を行ったが,4週間の投与にもかかわらず胃病変は軽快せず.胃粘膜病変では,びらん,リンパろ胞の発達,粘膜筋板の肥厚,細胞浸潤を認めたが,形質細胞は多くはなかった.梅毒反応が陽性であったことより胃梅毒を疑い,駆梅療法を行ったところ,わずか8日後に内視鏡検査上著明な改善を認めた.治療後施行したX線検査では,前庭部の伸展不良,壁硬化と大小不同の隆起を認めた.ホルマリン固定した胃生検標本の酵素抗体法(PAP法)にて胃粘膜内に多数のTreponema pallidumを証明し胃梅毒の確診を得た.

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