抄録
最近われわれは,左横隔膜弛緩症に伴う出血性胃潰瘍合併胃軸捻転症を経験し,観血的に治療する機会を得たので報告する. 症例は,75歳男性.主訴は嘔吐と腹部膨満.入院時の立位単純X線像で,左横隔膜の挙上と,鏡面像を伴う拡張した胃を認めた.緊急内視鏡検査では,胃の反時計方向への捻れ,大小の粘膜内出血と島状の浅い胃潰瘍の多発を認めた.胸部CTおよび上部消化管造影の結果,胃軸捻転症と診断した.保存的治療により食事ができるようになり一度は退院した.しかし,5カ月間に2回症状の再燃をみたため開腹術を施行,捻転を解除の後,胃を前腹壁に固定した.術後2カ月目の内視鏡所見では,胃の捻れはなく潰瘍の再発もみられなかった.胃の捻転に由来する通過障害を比較的軽度の手術侵襲で改善しえた点で,本症例は貴重と思われた.本疾患の診断における内視鏡検査の意義を中心に若干の文献的考察を加え報告する.