日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡的に経過を観察し得た,胃転移を呈した肝細胞癌の1例
高木 均桜井 誠司高橋 仁公植原 政弘高山 尚下田 隆也山田 昇司飯塚 春太郎小林 節雄
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1991 年 33 巻 2 号 p. 331-337

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抄録
 胃浸潤を呈した進行肝癌の1例を報告した.症例は62歳男性.上腹部の張りを訴えて初診し,AFP高値,画像診断より肝細胞癌と診断した.治療前の上部消化管内視鏡検査で前底部のBorrmann III型胃癌類似の所見がみられ,生検組織では腺癌であり,生前は二重癌との診断であったが,剖検により肝癌の胃転移であった.原発巣への治療として施行したAdriamycin(ADM)-lipiodolの動注,TAEによって胃腫瘍も縮小し,生検上癌細胞は消失し良性潰瘍の疲痕のごとくに消褪し,それらの変化が内視鏡的に経過観察された.死因は肝癌の増大から肝不全を来したことによるが,転移は胃幽門部からVater乳頭近くに及び,他膵頭部から胆管周囲にも浸潤しており肝は閉塞性黄疸を呈していた.胃粘膜へ肝細胞癌が浸潤増殖する例は稀で,かつ原発巣の治療により,胃粘膜面の転移腫瘍が改善し,それが内視鏡的に観察された報告はなく,希少な例と思われた.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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