抄録
肝切除時に門脈内腔の観察を目的として血管内視鏡(門脈内視鏡)を施行した.その臨床経験をもとに門脈内視鏡の可能性と問題点を検討した.対象症例は,肝細胞癌12例,転移性肝癌4例であった.門脈と肝動脈の血流遮断下にヘパリン加ハルトマン液を12m1/分の流量で門脈内に注入すると明瞭な視野が得られた.5ml/分の流量に減じても血液の逆流はなかったが,3m1/分以下の流量にすると血液の逆流を認めた.内視鏡のアングル機構を用いることで門脈3次分枝内まで容易に挿入できた.6例の開脈腫瘍塞栓(Vp3)を伴う肝細胞癌において門脈内腫瘍を観察し,内視鏡下にその除去を行うことができた.術中に行う門脈内視鏡は,門脈内腔の観察には高いポテンシャルを有すると考えられたが,門脈内腫瘍の除去には,さらに工夫が必要である.