抄録
症例は50歳の男性で,倦怠感,貧血を主訴に来院.胃X線検査にて"bull'seye"signを呈する小腫瘍の多発を認め転移性胃腫瘍と診断した.胃内視鏡検査では,胃体上部大彎中心に出血性の陥凹を伴う粘膜下腫瘍様の隆起性病変の多発を認めた.生検組織像では,異型核をもち細胞質の豊富な腫瘍細胞が粘膜内に浸潤していた.腹部CT検査では脾は著明に腫大し,まだら状の低吸収域を認め,脾原発の悪性腫瘍が疑われた.また,血液検査所見では播種性血管内凝固症(DIC)所見を認め,頻回に下血が見られた.死亡後の脾のnecropsyにて得られた腫瘍組織を病理組織学的および免疫組織学的に検索したところ,胃生検組織像と同様な腫瘍細胞がみられ,一部は血管腔を形成しており,また,免疫染色で腫瘍細胞の細胞質の一部に第VIII因子関連抗原陽性の部分を認め,血管肉腫と診断された. 転移性胃血管肉腫はきわめて稀であるが,血液に富んでいるために出血しやすい.また,血管系腫瘍はDICを併発しやすいことが報告されており,DICを併発した場合,転移巣からの出血は致命的となる.よって,DIC予防と純エタノール局注療法などによる転移巣の止血は重要であると考えられた.