日本消化器内視鏡学会雑誌
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腸結核の回盲部内視鏡像の検討―クローン病と対比して―
大川 清孝北野 厚生中村 志郎小畠 昭重押谷 伸英橋村 秀親日置 正人松本 誉之進藤 嘉一山田 英明針原 重義小林 絢三
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1991 年 33 巻 5 号 p. 932-938_1

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抄録

腸結核(TB)の回盲部内視鏡所見を盲腸,Bauhin弁,回腸末端の各部位に分けて,クローン病(CD)を比較対象として検討した.対象はTB30例(活動性12例,非活動性18例)とCD47例である.盲腸のTasche形成はCDでは4%にしか見られず,一方活動性TBでは33%にみられ鑑別診断上重要な所見と考えられた.盲腸の潰瘍形態はTBでは極めて多彩であり潰瘍形態のみから診断可能であったのは9例中3例のみでありその他の6例では潰瘍形態のみからの診断は不可能であった.一方,CDでは13例中12例がcobble stone像を伴う潰瘍であり診断は比較的一容易であった.Bauhin弁の閉鎖不全はCDの2%に対して活動性TBでは58%にみられTBに特異的で診断価値の最も高い所見であった.これに反して,CDではBauhin弁上に潰瘍や炎症性ポリープがみられることがあり,炎症に起因するBauhin弁の狭窄もみられることがあった.このようにBauhin弁の所見はTBとCDで対照的であり,病理組織学的な両者の違いを反映しているものと考えられた.回腸末端ではCD,TBともに不整形潰瘍を示すことが多く,CDでも縦走潰瘍,cobblestone像を示すことは少なかった.すなわち回腸末端よりも盲腸の方がCD,TBともに両疾患の特徴像を示しやすいと考えられた.以上の点に留意し盲腸,Bauhin弁,回腸末端の所見をすべて詳細に観察すればTBの診断は大多数の症例で可能となりCDとの鑑別もほぼ可能になると考えられた.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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