1991 年 33 巻 5 号 p. 956-961_1
症例は63歳,男性.1989年6月1日肝腫瘤とAFP高値の精査を目的に当科入院となった.基礎疾患に肝硬変が存在し,腹部CTおよび肝動脈血管造影の所見は多発性肝細胞癌を示したので,肝動脈内SMANCS注入療法を2回施行した.しかし,後日遠隔転移をきたし効果は不良であった.9月18日胃の小潰瘍から出血し吐血をみたが,内視鏡上同潰瘍は急速に増大,中心陥凹を伴う粘膜下腫瘍の形態(牛眼像)に至るとともに,周囲には大小の類似病変が多発した.これらの病変は病理組織学的に悪性リンパ腫であった. 剖検では肝内に肝細胞癌とともに多数の悪性リンパ腫結節が存在しこれが胃へ転移したものと推定された.