日本消化器内視鏡学会雑誌
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電子スコープによる上部消化管赤外線画像の検討
永尾 重昭
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1992 年 34 巻 10 号 p. 2287-2299

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抄録

 胃内直接照射方式の赤外線電子スコープを用い,広帯域,狭帯域赤外線による画像,さらにICG負荷による影響を検討した.広帯域赤外線像では,胃粘膜表面の皺襞並びに,ある程度の大きさのある局在病変を除き,微細構造はすべて消失し,幽門前庭部大彎では特徴ある深部の血管像が認められた.狭帯域赤外線では,広帯域に比し一層明瞭な血管像が得られた.さらにICGを負荷することにより細かな分枝まで血管像は極めて明瞭となった.赤外線像における深部血管像は体下部大彎では,網状に走行する網状血管像が82.3%に,太い血管像として描出される縦走血管像が17.7%に認められた.萎縮性胃炎ではその判定基準とされる粘膜面の微細血管像は認められなかった.胃潰瘍では,活動期には腫脹した辺縁部に血管像は認められず,治癒期では潰瘍辺縁近傍にまで深部血管が認められたのに対し,瘢痕期では瘢痕中心部に向かって集中傾向を示し瘢痕の辺縁で途絶する血管像が認められた.中心部では血管像は認められなかった.これにより,赤外線像で胃潰瘍瘢痕の範囲,深さなどの測定が可能となることが示唆された.今後さらに赤外線電子スコープを用いて上部消化管病変におけるその有用性について検討を加えその診断並びに予後判定に役立てたい.

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